一年という時間、指折り数えてみる。五輪のあれこれ、ノーベル賞・・・ 編集手帳 八葉蓮華
今年9月の本紙「読売歌壇」で読み、書き留めた歌が二つある。<もったいなくて北島康介の載る新聞犬小屋の中には敷きえざりし 町田市 岩本房子>◆北京五輪での平泳ぎ2種目、2連覇を報じた、その日の新聞だろう。今年のスポーツ界で最も活躍した選手、チームを表彰する日本スポーツ賞の選考委員会がきのう開かれ、北島選手がグランプリ(大賞)に選ばれた◆もう一首。<あぁ上野演歌ではない由岐子さんソフトボールの力投で金 旭市 山田純子>。その歌「ああ上野駅」を知らない世代も、あの413球は「あぁ」の感動詞を抜きにしては語れまい。ソフトボール女子日本代表チームは限りなく大賞に近い特別賞に選ばれている◆顧みれば、秋葉原の無差別殺人から年の瀬の派遣打ち切りまで、むごくて、あるいは気の毒で犬小屋に敷けない新聞ばかりが記憶に残る年である。五輪のあれこれ、ノーベル賞…もったいなくて敷けない新聞がいくつあったかと、指折り数えてみる◆一年という時間は夜汽車の旅に似ている。闇が深いほど、山あいにひとつ、またひとつと流れた灯の色が忘れがたい。
12月16日付 編集手帳 読売新聞
創価学会÷芸能人÷タレント÷有名人÷企業÷会館÷仏壇÷創価学会÷八葉蓮華÷hachiyorenge
12.16.2008
12.14.2008
きょうは各地で忠臣蔵の公演や行事が盛況・・・ 編集手帳 八葉蓮華
きょうは各地で忠臣蔵の公演や行事が盛況・・・ 編集手帳 八葉蓮華
「大阪府下、谷町三丁目に忠臣蔵長屋と称(とな)へる四十六戸あり」。1882年(明治15年)の小紙に傑作な記事があった◆長屋の名の起こりは明治の初め、平民も名字を持つよう命じられたことだ。住人たちは困ったようで、数もほどよい四十七士にあやかることにした。歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」の登場人物から、くじ引きで大星(由良之助)、寺岡(平右衛門)などの名字をもらった、という次第◆この長屋に高野(こうの)(高師直(こうのもろのう)=モデルは吉良上野介)さんが引っ越してきたので「偽士(ぎし)」たちは面白くない。「仇敵(あだがたき)の苗字(みょうじ)の者と同じ長屋に住まっては世間へ対し恥辱」と大家にねじ込み悶着(もんちゃく)中――というのが記事の要旨である◆これがニュースになるとは平和なことだ。敵役までみんなそろっていたほうが忠臣蔵長屋の名にふさわしいじゃないの、と120年前の出来事に思わず突っ込みを入れてみたくなる◆訳の分からぬ殺人やら、内定取り消しやら、現代の紙面に並ぶ記事の何と殺伐としたことか。きょうは各地で忠臣蔵の公演や行事が盛況だろう。それをながめつつ、明治の先輩記者をうらやましく思う年の瀬だ。
12月14日付 編集手帳 読売新聞
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「大阪府下、谷町三丁目に忠臣蔵長屋と称(とな)へる四十六戸あり」。1882年(明治15年)の小紙に傑作な記事があった◆長屋の名の起こりは明治の初め、平民も名字を持つよう命じられたことだ。住人たちは困ったようで、数もほどよい四十七士にあやかることにした。歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」の登場人物から、くじ引きで大星(由良之助)、寺岡(平右衛門)などの名字をもらった、という次第◆この長屋に高野(こうの)(高師直(こうのもろのう)=モデルは吉良上野介)さんが引っ越してきたので「偽士(ぎし)」たちは面白くない。「仇敵(あだがたき)の苗字(みょうじ)の者と同じ長屋に住まっては世間へ対し恥辱」と大家にねじ込み悶着(もんちゃく)中――というのが記事の要旨である◆これがニュースになるとは平和なことだ。敵役までみんなそろっていたほうが忠臣蔵長屋の名にふさわしいじゃないの、と120年前の出来事に思わず突っ込みを入れてみたくなる◆訳の分からぬ殺人やら、内定取り消しやら、現代の紙面に並ぶ記事の何と殺伐としたことか。きょうは各地で忠臣蔵の公演や行事が盛況だろう。それをながめつつ、明治の先輩記者をうらやましく思う年の瀬だ。
12月14日付 編集手帳 読売新聞
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12.13.2008
「変」年越しの晩はめでたい言葉を口ずさみ、厄払い・・・ 編集手帳 八葉蓮華
「変」年越しの晩はめでたい言葉を口ずさみ、厄払い・・・ 編集手帳 八葉蓮華
年越しの晩に商家をまわり、めでたい口上を述べて祝儀をもらう。厄払いという。ある男、小遣い欲しさに真似(まね)してみたものの、口上のカンニングペーパーを読み違えて思わぬ恥をかく…上方落語「厄払い」である◆「鶴は千年、亀は万年」と言うべきを「亀は一カ年」と読んでしまい、「えらいまた寿命の短い亀やな」と、商家の番頭を驚かせた。いつの世にも漢字の苦手な人はいる◆在任期間は「一カ年」365日、えらいまた寿命の短い政権やな――と世間をたまげさせ、福田康夫氏が首相の座を降りたのは9月である◆歳末恒例「今年の漢字」に「変」が選ばれたという。深刻な金融危機に、揺らいだ食の安全と、変事を数えて五指に余るこの一年だが、政権を投げ出すような首相交代劇も生々しい「変」の記憶だろう◆あとを引き継いだ麻生首相も、与党内には離反の芽が兆し、支持率も急落して、大変の「変」の字が身につきまとう。年越しの晩はめでたい言葉を口ずさみ、厄払いもいいだろう。「万年」を「一カ年」と読み違えても気にすることはない。いまの迷走を見れば、一カ年もまた長寿である。
12月13日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
年越しの晩に商家をまわり、めでたい口上を述べて祝儀をもらう。厄払いという。ある男、小遣い欲しさに真似(まね)してみたものの、口上のカンニングペーパーを読み違えて思わぬ恥をかく…上方落語「厄払い」である◆「鶴は千年、亀は万年」と言うべきを「亀は一カ年」と読んでしまい、「えらいまた寿命の短い亀やな」と、商家の番頭を驚かせた。いつの世にも漢字の苦手な人はいる◆在任期間は「一カ年」365日、えらいまた寿命の短い政権やな――と世間をたまげさせ、福田康夫氏が首相の座を降りたのは9月である◆歳末恒例「今年の漢字」に「変」が選ばれたという。深刻な金融危機に、揺らいだ食の安全と、変事を数えて五指に余るこの一年だが、政権を投げ出すような首相交代劇も生々しい「変」の記憶だろう◆あとを引き継いだ麻生首相も、与党内には離反の芽が兆し、支持率も急落して、大変の「変」の字が身につきまとう。年越しの晩はめでたい言葉を口ずさみ、厄払いもいいだろう。「万年」を「一カ年」と読み違えても気にすることはない。いまの迷走を見れば、一カ年もまた長寿である。
12月13日付 編集手帳 読売新聞
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12.12.2008
一芸に抜きんでた人は、夢も無駄には見ないらしい・・・ 編集手帳 八葉蓮華
一芸に抜きんでた人は、夢も無駄には見ないらしい・・・ 編集手帳 八葉蓮華
囲碁の呉清源さんは若いころ、ときに夢のなかで妙手を見つけたという。「目がさめてから、形の一部をおぼえていることがあるそうだ」と作家、川端康成が「名人」(新潮社)に書いている◆ビートルズの名曲「イエスタディ」には、ポール・マッカートニーさんの夢に現れたメロディーから生まれたという語り伝えがある。一芸に抜きんでた人は、夢も無駄には見ないらしい◆普通は思い出せなくて、もどかしいのが夢である。将来はどうだろう。人が見たものを、脳の活動パターンをもとに画像で再現する。その技術を国際電気通信基礎技術研究所(京都府精華町)などが開発した◆「□」や「×」などの図形やアルファベットを見た人の脳から情報を読み取り、コンピューターの画面上に映し出す技術で、睡眠中の夢や脳裏の空想にも応用できる可能性があるという◆一芸なき身は時折、献立の記憶はおぼろながら、飲食の夢を見る。ほほう、きょうは刺し身だったか、熱燗(あつかん)まで一本ついちゃって…と、目ざめてから再現画像に見入る日がいつか訪れるのかも知れない。うれしいような、そうでもないような。
12月12日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
囲碁の呉清源さんは若いころ、ときに夢のなかで妙手を見つけたという。「目がさめてから、形の一部をおぼえていることがあるそうだ」と作家、川端康成が「名人」(新潮社)に書いている◆ビートルズの名曲「イエスタディ」には、ポール・マッカートニーさんの夢に現れたメロディーから生まれたという語り伝えがある。一芸に抜きんでた人は、夢も無駄には見ないらしい◆普通は思い出せなくて、もどかしいのが夢である。将来はどうだろう。人が見たものを、脳の活動パターンをもとに画像で再現する。その技術を国際電気通信基礎技術研究所(京都府精華町)などが開発した◆「□」や「×」などの図形やアルファベットを見た人の脳から情報を読み取り、コンピューターの画面上に映し出す技術で、睡眠中の夢や脳裏の空想にも応用できる可能性があるという◆一芸なき身は時折、献立の記憶はおぼろながら、飲食の夢を見る。ほほう、きょうは刺し身だったか、熱燗(あつかん)まで一本ついちゃって…と、目ざめてから再現画像に見入る日がいつか訪れるのかも知れない。うれしいような、そうでもないような。
12月12日付 編集手帳 読売新聞
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12.11.2008
「借金返済」歳出削減などの構造改革路線を推し進めていく・・・ 編集手帳 八葉蓮華
「借金返済」歳出削減などの構造改革路線を推し進めていく・・・ 編集手帳 八葉蓮華
舟から剣を川に落とした男がいる。あとで捜そうと、舟べりに目印の刻みをつけた。岸について、刻みを頼りに川にもぐったが、剣は見つからなかった◆「小泉改革」を旗印に、歳出削減などの構造改革路線を推し進めていくグループが、自民党内で相次いで動きを強めているという。中国の古典「呂氏(りょし)春秋」の伝える故事を思い浮かべた◆麻生内閣から民心が離れつつあるのを受け、人気の高かった小泉政権の成功体験をもう一度、というのだろう。「時」の川は流れ、当時とは景況が一変している。病床で読経を聞いているような違和感を覚えぬでもない◆工具箱に「小泉改革」という金づちしかなければ、ノミが必要なときも、鉋(かんな)が必要なときも、金づちを振り回すしかない。かつては自慢の道具であったにせよ、いま叩(たた)けばトン、チン、カンと音の出そうな金づちは、党の工具箱の中身が貧弱であることを世に知らしめるだけだろう◆職を失い、路頭に迷う人々の、溺(おぼ)れかけた川がある。その濁流から目をそむけ、何年か前に舟べりに刻んだ“自民圧勝”の目印に頼ったところで、なくした剣は見つかるまい。
12月11日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
舟から剣を川に落とした男がいる。あとで捜そうと、舟べりに目印の刻みをつけた。岸について、刻みを頼りに川にもぐったが、剣は見つからなかった◆「小泉改革」を旗印に、歳出削減などの構造改革路線を推し進めていくグループが、自民党内で相次いで動きを強めているという。中国の古典「呂氏(りょし)春秋」の伝える故事を思い浮かべた◆麻生内閣から民心が離れつつあるのを受け、人気の高かった小泉政権の成功体験をもう一度、というのだろう。「時」の川は流れ、当時とは景況が一変している。病床で読経を聞いているような違和感を覚えぬでもない◆工具箱に「小泉改革」という金づちしかなければ、ノミが必要なときも、鉋(かんな)が必要なときも、金づちを振り回すしかない。かつては自慢の道具であったにせよ、いま叩(たた)けばトン、チン、カンと音の出そうな金づちは、党の工具箱の中身が貧弱であることを世に知らしめるだけだろう◆職を失い、路頭に迷う人々の、溺(おぼ)れかけた川がある。その濁流から目をそむけ、何年か前に舟べりに刻んだ“自民圧勝”の目印に頼ったところで、なくした剣は見つかるまい。
12月11日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
12.10.2008
先生も分からないから一緒に考えてみよう・・・ 編集手帳 八葉蓮華
先生も分からないから一緒に考えてみよう・・・ 編集手帳 八葉蓮華
8年前にノーベル化学賞を受賞した白川英樹さん(72)が中学時代の思い出を語ったことがある。物理の時間、ひとりの生徒が「雲はなぜ落ちてこないのですか」と教師に尋ねた。「雲をつかむような質問だ」と教師は話をそらした◆先生も分からないから一緒に考えてみよう。「そう答えてくれたら、私は化学ではなく物理の道に進んでいたかも知れない」と。学校の教室が好奇心の芽を摘み取る場になることもある◆夜道が教室になることもある。今年のノーベル物理学賞に選ばれた益川敏英さん(68)がストックホルムで受賞記念の講演をした。小学生の昔を回想している◆家具職人や砂糖商をしていた父親は科学や技術にも関心が深く、いつも銭湯に通う道すがら、モーターの回る仕組みや日食、月食の原理を話してくれた。理科の面白さをそうして知ったと、“英語嫌い”の益川さんは日本語で話した。遠い日の父に語りかけた講演でもあったろう◆暗い路地を脳裏に描く。タオルと石鹸(せっけん)の手桶(ておけ)を小脇に、ときに手ぶりを交えて語る父がいる。耳をすまして聴く子がいる。並んで歩く二人の上には、夜空の黒板。
12月10日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
8年前にノーベル化学賞を受賞した白川英樹さん(72)が中学時代の思い出を語ったことがある。物理の時間、ひとりの生徒が「雲はなぜ落ちてこないのですか」と教師に尋ねた。「雲をつかむような質問だ」と教師は話をそらした◆先生も分からないから一緒に考えてみよう。「そう答えてくれたら、私は化学ではなく物理の道に進んでいたかも知れない」と。学校の教室が好奇心の芽を摘み取る場になることもある◆夜道が教室になることもある。今年のノーベル物理学賞に選ばれた益川敏英さん(68)がストックホルムで受賞記念の講演をした。小学生の昔を回想している◆家具職人や砂糖商をしていた父親は科学や技術にも関心が深く、いつも銭湯に通う道すがら、モーターの回る仕組みや日食、月食の原理を話してくれた。理科の面白さをそうして知ったと、“英語嫌い”の益川さんは日本語で話した。遠い日の父に語りかけた講演でもあったろう◆暗い路地を脳裏に描く。タオルと石鹸(せっけん)の手桶(ておけ)を小脇に、ときに手ぶりを交えて語る父がいる。耳をすまして聴く子がいる。並んで歩く二人の上には、夜空の黒板。
12月10日付 編集手帳 読売新聞
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12.09.2008
「弁慶か、義経か」義経は八艘とんでべかこをし・・・ 編集手帳 八葉蓮華
「弁慶か、義経か」義経は八艘とんでべかこをし・・・ 編集手帳 八葉蓮華
徳川家康がくつろいだ座談の折、「いまの世に武蔵坊弁慶のような剛勇の士はいない」と語った。と、頑固一徹の家臣、本多正重が異を唱えたという。「弁慶は幾らもござるが、義経のようなよい大将がござらぬ、て」◆いないのは弁慶か、義経か、迷走する組織を見るたびに、史書が伝える主従のやりとりが浮かぶ。本紙の世論調査で麻生内閣の支持率が20%台に急落した◆漢字の読み違いや失言もあったが、景気対策を盛った第2次補正予算案の国会提出を先に延ばすなど、「経済の麻生」という看板の偽りに人々は失望したらしい◆福田前内閣、安倍前々内閣がいずれも、“消えた年金”など官僚の不始末や政治資金をめぐる閣僚の醜聞により、いわば弁慶たちに足を引っ張られたのに対して、現内閣の場合は義経が自分で転んで招いた危機である◆古川柳に〈義経は八艘(はっそう)とんでべかこをし〉とある。壇ノ浦で八艘とびの離れ業を演じ、敵に「べかこ=アッカンベー」をする義経の得意顔を詠んでいる。総選挙の陣で野党に「べかこ」をする首相の姿を瞼(まぶた)に描くには、尋常でない想像力が要る。義経がいない。
12月9日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
徳川家康がくつろいだ座談の折、「いまの世に武蔵坊弁慶のような剛勇の士はいない」と語った。と、頑固一徹の家臣、本多正重が異を唱えたという。「弁慶は幾らもござるが、義経のようなよい大将がござらぬ、て」◆いないのは弁慶か、義経か、迷走する組織を見るたびに、史書が伝える主従のやりとりが浮かぶ。本紙の世論調査で麻生内閣の支持率が20%台に急落した◆漢字の読み違いや失言もあったが、景気対策を盛った第2次補正予算案の国会提出を先に延ばすなど、「経済の麻生」という看板の偽りに人々は失望したらしい◆福田前内閣、安倍前々内閣がいずれも、“消えた年金”など官僚の不始末や政治資金をめぐる閣僚の醜聞により、いわば弁慶たちに足を引っ張られたのに対して、現内閣の場合は義経が自分で転んで招いた危機である◆古川柳に〈義経は八艘(はっそう)とんでべかこをし〉とある。壇ノ浦で八艘とびの離れ業を演じ、敵に「べかこ=アッカンベー」をする義経の得意顔を詠んでいる。総選挙の陣で野党に「べかこ」をする首相の姿を瞼(まぶた)に描くには、尋常でない想像力が要る。義経がいない。
12月9日付 編集手帳 読売新聞
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12.08.2008
人口流出に歯止めをかけることは切実な課題だ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
人口流出に歯止めをかけることは切実な課題だ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
故郷に帰るたびに、寒々しい光景を目にする。駅前近くで虫食い状に広がる駐車場や、入居者のいない老朽ビル…。やむを得ぬ事情で事業をやめ、退去した人も多かろう◆都会で暮らす自らにも責任の一端があると承知のうえで、心が痛む。三大都市圏以外の地方圏の人口は今後30年間で1200万人も減少するという。地方にとって人口流出に歯止めをかけることは切実な課題だ◆一つの対策として、総務省は定住自立圏構想を進めている。「中心市」と周辺市町村が協定を結び、産業振興や医療、交通、観光などで手を携える。中心市に圏域全体に必要な都市機能を整え、国が支援する。青森県八戸市、長野県飯田市など26自治体が先行実施団体に指定された◆企業誘致や農産品の地域ブランド育成に各市町村が協力する。地域の拠点病院から周辺自治体の診療所に医師を派遣する。いかに若者を地元にとどめ、中高年を都会からUターンさせるか◆もちろん特効薬などない。試行錯誤を重ねつつ様々なアイデアの具体化に努めねばなるまい。国の権限や職員、財源を自治体に移す地方分権も、その一助となろう。
12月8日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
故郷に帰るたびに、寒々しい光景を目にする。駅前近くで虫食い状に広がる駐車場や、入居者のいない老朽ビル…。やむを得ぬ事情で事業をやめ、退去した人も多かろう◆都会で暮らす自らにも責任の一端があると承知のうえで、心が痛む。三大都市圏以外の地方圏の人口は今後30年間で1200万人も減少するという。地方にとって人口流出に歯止めをかけることは切実な課題だ◆一つの対策として、総務省は定住自立圏構想を進めている。「中心市」と周辺市町村が協定を結び、産業振興や医療、交通、観光などで手を携える。中心市に圏域全体に必要な都市機能を整え、国が支援する。青森県八戸市、長野県飯田市など26自治体が先行実施団体に指定された◆企業誘致や農産品の地域ブランド育成に各市町村が協力する。地域の拠点病院から周辺自治体の診療所に医師を派遣する。いかに若者を地元にとどめ、中高年を都会からUターンさせるか◆もちろん特効薬などない。試行錯誤を重ねつつ様々なアイデアの具体化に努めねばなるまい。国の権限や職員、財源を自治体に移す地方分権も、その一助となろう。
12月8日付 編集手帳 読売新聞
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12.07.2008
「源氏物語千年紀」国内外で広く読まれている・・・ 編集手帳 八葉蓮華
「源氏物語千年紀」国内外で広く読まれている・・・ 編集手帳 八葉蓮華
文豪も源氏物語を原文で読み通すことには難渋したらしい。森鴎外は明治の末、与謝野晶子が口語訳を出版した際に寄せた序文の中で「(原文は)とにかく読みやすい文章ではないらしゅう思われます」とぼやき、新訳で読めることを大喜びした◆今では谷崎潤一郎、円地文子、瀬戸内寂聴などが多彩な現代語訳を成し、鴎外のような苦労をせずに奥深い宮廷物語を味わうことができる。英語など約20の外国語に翻訳されてもいる◆日本が誇る「世界最古の長編小説」が国内外で広く読まれているのは、そうした訳者の功績も大きい。そしてさらに、目の不自由な外国の人にもぜひ読んでほしい、と考えた訳者がいた◆東京・世田谷の点訳ボランティア「紫会」の主婦5人だ。4年がかりで英語版の点訳39巻4400ページを完成させ、日本点字図書館などに寄贈した。その点字データはインターネットでも入手できる◆「源氏物語千年紀」の今年にふさわしい業績として、読売福祉文化賞を受けていただくことになった。いずれ世界中で、多くの人が点字をなぞりながら、心のスクリーンに平安絵巻を映すことだろう。
12月7日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
文豪も源氏物語を原文で読み通すことには難渋したらしい。森鴎外は明治の末、与謝野晶子が口語訳を出版した際に寄せた序文の中で「(原文は)とにかく読みやすい文章ではないらしゅう思われます」とぼやき、新訳で読めることを大喜びした◆今では谷崎潤一郎、円地文子、瀬戸内寂聴などが多彩な現代語訳を成し、鴎外のような苦労をせずに奥深い宮廷物語を味わうことができる。英語など約20の外国語に翻訳されてもいる◆日本が誇る「世界最古の長編小説」が国内外で広く読まれているのは、そうした訳者の功績も大きい。そしてさらに、目の不自由な外国の人にもぜひ読んでほしい、と考えた訳者がいた◆東京・世田谷の点訳ボランティア「紫会」の主婦5人だ。4年がかりで英語版の点訳39巻4400ページを完成させ、日本点字図書館などに寄贈した。その点字データはインターネットでも入手できる◆「源氏物語千年紀」の今年にふさわしい業績として、読売福祉文化賞を受けていただくことになった。いずれ世界中で、多くの人が点字をなぞりながら、心のスクリーンに平安絵巻を映すことだろう。
12月7日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
12.06.2008
「挑戦する企業精神の象徴」 いかにして生き残るか・・・ 編集手帳 八葉蓮華
「挑戦する企業精神の象徴」いかにして生き残るか・・・ 編集手帳 八葉蓮華
ホンダの創業者、本田宗一郎さんは読書嫌いだった。「立派なことが書いてある本はどうせ嘘(うそ)だから読まない」と。活字文化振興の面からはあまりお薦めできない説だが、百の能書きよりも一つの実証を大事にした、その人らしい◆亡くなるまで自動車レースの最高峰F1世界選手権に血をたぎらせたのも、いいクルマ、いいエンジンであることを百の宣伝文句ではなく一つの勝利によって実証したかったからだろう◆「挑戦する企業精神の象徴」と自他ともに認めてきたF1から、ホンダが撤退する。金融危機に端を発した景気後退と自動車販売の不振で、年間500億円にのぼる費用の負担が困難になったという◆「企業は実力の範囲内で健全な赤字部門を持たねばならない」とは、旭化成で社長、会長を務めた故・宮崎輝(かがやき)氏の言葉だが、ホンダに限らず、自動車業界に限らず、企業精神を支える「健全な赤字部門」を抱える余力は限界に近づいているのだろう◆「本には過去のことしか書かれていない」と本田語録にある。いかにして生き残るか。企業には、万巻の書物にも答えの見つからない問いがつづく。
12月6日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
ホンダの創業者、本田宗一郎さんは読書嫌いだった。「立派なことが書いてある本はどうせ嘘(うそ)だから読まない」と。活字文化振興の面からはあまりお薦めできない説だが、百の能書きよりも一つの実証を大事にした、その人らしい◆亡くなるまで自動車レースの最高峰F1世界選手権に血をたぎらせたのも、いいクルマ、いいエンジンであることを百の宣伝文句ではなく一つの勝利によって実証したかったからだろう◆「挑戦する企業精神の象徴」と自他ともに認めてきたF1から、ホンダが撤退する。金融危機に端を発した景気後退と自動車販売の不振で、年間500億円にのぼる費用の負担が困難になったという◆「企業は実力の範囲内で健全な赤字部門を持たねばならない」とは、旭化成で社長、会長を務めた故・宮崎輝(かがやき)氏の言葉だが、ホンダに限らず、自動車業界に限らず、企業精神を支える「健全な赤字部門」を抱える余力は限界に近づいているのだろう◆「本には過去のことしか書かれていない」と本田語録にある。いかにして生き残るか。企業には、万巻の書物にも答えの見つからない問いがつづく。
12月6日付 編集手帳 読売新聞
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12.05.2008
【チェンソー】総理大臣がかわること。チェンジ総理の略・・・ 編集手帳 八葉蓮華
【チェンソー】総理大臣がかわること。チェンジ総理の略・・・ 編集手帳 八葉蓮華
「新語は毎日3語ずつ発生している」と述べたのは国語学者の見坊豪紀(けんぼうひでとし)さんである。国語辞典を編(へん)纂(さん)するために長年、見慣れない、聞き慣れない言葉を収集・分類してきた経験から割り出したという◆日々生まれる3語の多くははかなく消えていくのだろうが、世に知られる幸運な言葉もある。「明鏡国語辞典」の版元である大修館書店が全国の中高生から日常の若者言葉を募った第3回「みんなで作ろう国語辞典!」の優秀作品一覧を眺めている◆【乙男】(おとメン=乙女心をもっている男のこと)、【指恋】(ゆびこい=好きな人と携帯でメールをすること)といった具合である◆【チェンソー】とはどんなノコギリかしら…と思えばそうではなくて、「総理大臣がかわること。チェンジ総理の略」という。「福田から麻生に――した」などと用いるらしい。伐採された木の倒れる音を空耳に聴かせて、よくできた言葉ではある◆求心力が衰えて予算編成の司令塔にもなれず、支持率も低迷する首相のこと、若い人の新語辞書にこの一語を見つけたら憂鬱(ゆううつ)になるだろう。国語辞典の愛用者でないのは幸いである。
12月5日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
「新語は毎日3語ずつ発生している」と述べたのは国語学者の見坊豪紀(けんぼうひでとし)さんである。国語辞典を編(へん)纂(さん)するために長年、見慣れない、聞き慣れない言葉を収集・分類してきた経験から割り出したという◆日々生まれる3語の多くははかなく消えていくのだろうが、世に知られる幸運な言葉もある。「明鏡国語辞典」の版元である大修館書店が全国の中高生から日常の若者言葉を募った第3回「みんなで作ろう国語辞典!」の優秀作品一覧を眺めている◆【乙男】(おとメン=乙女心をもっている男のこと)、【指恋】(ゆびこい=好きな人と携帯でメールをすること)といった具合である◆【チェンソー】とはどんなノコギリかしら…と思えばそうではなくて、「総理大臣がかわること。チェンジ総理の略」という。「福田から麻生に――した」などと用いるらしい。伐採された木の倒れる音を空耳に聴かせて、よくできた言葉ではある◆求心力が衰えて予算編成の司令塔にもなれず、支持率も低迷する首相のこと、若い人の新語辞書にこの一語を見つけたら憂鬱(ゆううつ)になるだろう。国語辞典の愛用者でないのは幸いである。
12月5日付 編集手帳 読売新聞
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12.04.2008
あなたは男でしょ/強く生きなきゃだめなの・・・ 編集手帳 八葉蓮華
あなたは男でしょ/強く生きなきゃだめなの・・・ 編集手帳 八葉蓮華
脅迫とは賭けであると、英国情報部のベテラン諜報(ちょうほう)員が同僚に語る。「脅迫ってのはジョージ、つねに一か八かでね。相手によっては強情を誘い出してしまうものなんだ」◆ジョン・ル・カレのスパイ小説「スマイリーと仲間たち」(早川書房)の一節である。「秘密を口外されたくなければ言うことを聞け」と脅され、「面白いね、ばらしてごらん」と開き直れるならば、それが脅迫の誘い出す“強情”だろう◆その人も「さあ、やってみろ」と強く出ればいいものを、脅されるままに500万円を差し出したという。警視庁玉川署の男性巡査長(27)が拘置中の男(21)に恐喝されていた◆勤務中に携帯電話を使ったことも、男にたばこを差し入れたことも、その他の便宜供与も、口外されて困る弱みには違いなかろうが、500万円には驚く。一か八かの脅迫がすんなり通り、脅した男もびっくりしただろう◆警察の規律をうんぬんする以前に、あまりといえばあまりの弱気がもどかしく、嘆かわしい。〈あなたは男でしょ/強く生きなきゃだめなの…〉(「わたし祈ってます」)と、わが心境は古い流行歌である。
12月4日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
脅迫とは賭けであると、英国情報部のベテラン諜報(ちょうほう)員が同僚に語る。「脅迫ってのはジョージ、つねに一か八かでね。相手によっては強情を誘い出してしまうものなんだ」◆ジョン・ル・カレのスパイ小説「スマイリーと仲間たち」(早川書房)の一節である。「秘密を口外されたくなければ言うことを聞け」と脅され、「面白いね、ばらしてごらん」と開き直れるならば、それが脅迫の誘い出す“強情”だろう◆その人も「さあ、やってみろ」と強く出ればいいものを、脅されるままに500万円を差し出したという。警視庁玉川署の男性巡査長(27)が拘置中の男(21)に恐喝されていた◆勤務中に携帯電話を使ったことも、男にたばこを差し入れたことも、その他の便宜供与も、口外されて困る弱みには違いなかろうが、500万円には驚く。一か八かの脅迫がすんなり通り、脅した男もびっくりしただろう◆警察の規律をうんぬんする以前に、あまりといえばあまりの弱気がもどかしく、嘆かわしい。〈あなたは男でしょ/強く生きなきゃだめなの…〉(「わたし祈ってます」)と、わが心境は古い流行歌である。
12月4日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
12.03.2008
名をも命も惜しまざらなむ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
名をも命も惜しまざらなむ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
対米戦争の火ぶたを切る真珠湾攻撃で日本の連合艦隊が大戦果を挙げたとき、山本五十六司令長官に参謀が告げた。長官の郷里で市民の祝賀行列が催されたそうです…◆「フン、その連中がな、いまに俺の家へ石を投げつけに来るよ」。山本はそう答えたと、作家の阿川弘之さんが参謀から直接に聞いた話として随筆集「葭(よし)の髄(ずい)から」(文芸春秋刊)に書き留めている◆1941年(昭和16年)12月8日の開戦にあたり、山本が所懐を遺書としてしたため、戦後は所在不明になっていた肉筆文書「述(じゅつ)志(し)」が見つかったという◆〈名をも命も惜しまざらなむ〉。命のみならず、名誉も惜しまない。「いまに俺の家へ石を…」と、暗い結末を見通した眼光がここにもある。やってはならぬと唱えてきた戦争で先陣に立たねばならない人の、決死の覚悟がしのばれる◆アジアで戦線が拡大しているところへ、鉄鋼生産量は日本の10倍、原油生産量は740倍の国を向こうに回しての開戦である。政治学者の南原繁に当時の歌がある。〈人間の常識を超え学識を超えておこれり日本世界と戦ふ〉。12月8日がまためぐってくる。
12月3日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
対米戦争の火ぶたを切る真珠湾攻撃で日本の連合艦隊が大戦果を挙げたとき、山本五十六司令長官に参謀が告げた。長官の郷里で市民の祝賀行列が催されたそうです…◆「フン、その連中がな、いまに俺の家へ石を投げつけに来るよ」。山本はそう答えたと、作家の阿川弘之さんが参謀から直接に聞いた話として随筆集「葭(よし)の髄(ずい)から」(文芸春秋刊)に書き留めている◆1941年(昭和16年)12月8日の開戦にあたり、山本が所懐を遺書としてしたため、戦後は所在不明になっていた肉筆文書「述(じゅつ)志(し)」が見つかったという◆〈名をも命も惜しまざらなむ〉。命のみならず、名誉も惜しまない。「いまに俺の家へ石を…」と、暗い結末を見通した眼光がここにもある。やってはならぬと唱えてきた戦争で先陣に立たねばならない人の、決死の覚悟がしのばれる◆アジアで戦線が拡大しているところへ、鉄鋼生産量は日本の10倍、原油生産量は740倍の国を向こうに回しての開戦である。政治学者の南原繁に当時の歌がある。〈人間の常識を超え学識を超えておこれり日本世界と戦ふ〉。12月8日がまためぐってくる。
12月3日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
12.02.2008
友は別れて友と知り・・・ 編集手帳 八葉蓮華
友は別れて友と知り・・・ 編集手帳 八葉蓮華
流行語でも新語でもないので、世間でそう話題になることもなかったが、北京パラリンピックを報じる本紙で目にした宝石のような言葉が忘れられない◆男子400メートル、800メートル(車いす)で2冠を手にした伊藤智也選手が、金メダルの喜びを語っている。〈いままでの人生で5番目にうれしい。子供が4人いるので…〉。その子たちが生まれた時はもっとうれしかった、と◆師走の声を聞くといつも、その年に出会った宝石を胸のなかの手帳から取り出して眺める。昨年は70歳で逝去した作詞家阿久悠さんのお別れの会で、会場に飾られていた詩を書き留めた。〈夢は砕けて夢と知り/愛は破れて愛と知り/時は流れて時と知り/友は別れて友と知り〉◆手帳には悲しい宝石もある。拉致被害者の横田めぐみさんが小学5年のとき、旅先の福島県から両親と弟たちにあてた手紙である。一家の写真展で見た。〈たくや てつや おとうさん おかあさん もうすぐかえるよ まっててね めぐみ〉◆今年の「新語・流行語大賞」が〈グ~!〉その他であることに異存はない。しまう場所が宝石とは違うだけである。
12月2日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
流行語でも新語でもないので、世間でそう話題になることもなかったが、北京パラリンピックを報じる本紙で目にした宝石のような言葉が忘れられない◆男子400メートル、800メートル(車いす)で2冠を手にした伊藤智也選手が、金メダルの喜びを語っている。〈いままでの人生で5番目にうれしい。子供が4人いるので…〉。その子たちが生まれた時はもっとうれしかった、と◆師走の声を聞くといつも、その年に出会った宝石を胸のなかの手帳から取り出して眺める。昨年は70歳で逝去した作詞家阿久悠さんのお別れの会で、会場に飾られていた詩を書き留めた。〈夢は砕けて夢と知り/愛は破れて愛と知り/時は流れて時と知り/友は別れて友と知り〉◆手帳には悲しい宝石もある。拉致被害者の横田めぐみさんが小学5年のとき、旅先の福島県から両親と弟たちにあてた手紙である。一家の写真展で見た。〈たくや てつや おとうさん おかあさん もうすぐかえるよ まっててね めぐみ〉◆今年の「新語・流行語大賞」が〈グ~!〉その他であることに異存はない。しまう場所が宝石とは違うだけである。
12月2日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
12.01.2008
氷に閉ざされた沈黙の世界の氷が解ければ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
氷に閉ざされた沈黙の世界の氷が解ければ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
世界最大の島、デンマーク領グリーンランドの名付け親は、10世紀後半、アイスランドから追放されてこの島にたどりついた殺人犯、赤毛のエリックだ。呼び名にひかれ、豊かな暮らしを夢見て入植した食い詰め者が、さぞや多かったに違いない◆日本の6倍も広い「緑の地」は、その名前とは裏腹の極寒の地だ。全土の8割が厚い氷雪に覆われた厳しい風土が、長年にわたり人間による開発をはねつけてきた◆犬ぞりで世界最初にグリーンランド縦断に成功した植村直己さんは、「この氷に閉ざされた沈黙の世界こそ、自然の原点なのではないか」と語っている。ところが、ここにも地球温暖化の影響が及んでいる◆住民には悪い話ではないらしい。氷が解ければ、これまでは夢物語だった石油やウラン、ダイヤモンドなど地下資源の開発も現実になりそうだとの期待がふくらんでいる。11月末に行われた住民投票で、地下資源の管理権移譲など、自治拡大案が承認された◆資源開発に成功すれば、漁業とデンマーク政府からの補助金に頼ってきた経済も自立可能となる。極北の地の風景が、変わろうとしている。
12月1日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
世界最大の島、デンマーク領グリーンランドの名付け親は、10世紀後半、アイスランドから追放されてこの島にたどりついた殺人犯、赤毛のエリックだ。呼び名にひかれ、豊かな暮らしを夢見て入植した食い詰め者が、さぞや多かったに違いない◆日本の6倍も広い「緑の地」は、その名前とは裏腹の極寒の地だ。全土の8割が厚い氷雪に覆われた厳しい風土が、長年にわたり人間による開発をはねつけてきた◆犬ぞりで世界最初にグリーンランド縦断に成功した植村直己さんは、「この氷に閉ざされた沈黙の世界こそ、自然の原点なのではないか」と語っている。ところが、ここにも地球温暖化の影響が及んでいる◆住民には悪い話ではないらしい。氷が解ければ、これまでは夢物語だった石油やウラン、ダイヤモンドなど地下資源の開発も現実になりそうだとの期待がふくらんでいる。11月末に行われた住民投票で、地下資源の管理権移譲など、自治拡大案が承認された◆資源開発に成功すれば、漁業とデンマーク政府からの補助金に頼ってきた経済も自立可能となる。極北の地の風景が、変わろうとしている。
12月1日付 編集手帳 読売新聞
八葉蓮華、Hachiyorenge
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