9.19.2010

ため息をひとつ「命」子供が18人います。1日に3人ずつ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 題名を『命(いのち)屋(や)』という。〈「命屋」さんがあればいいね/でも/命を買い替えられたら/みんな一生けん命/生きないかもね/そしたら/つまらない人生になるね〉

 かつて本紙の『こどもの詩』欄に載った一編で、作者は小学3年生の男児である。「人生」や「命」といった大人でもときに持て余す重たいテーマに、こういう洞察のできる年ごろである。その記事を読み返しながら、ため息をひとつ、ついてみる

 「子供が18人います。1日に3人ずつコロすと、何日で全員を殺せるでしょう?」。愛知県岡崎市の市立小学校で3年生のクラスを担任する男性教諭が、算数の授業でそういう出題をしたという。市の教育委員会は口頭で厳重注意し、担任を外した。児童の興味を引くためにリンゴやミカンとは違う出題をしたらしいが、冒頭の詩と読み比べて、どちらが大人でどちらが子供か分からない

 本紙掲載の詩を、もう一つ引く。題は『右側が見えづらい弟』、障ガイをもつ弟のことを書いている。その一節。〈だから私はいつも弟の右側にいる〉。こちらは小学4年生の女児である

 子供をなめてはいけない。

 9月16日付 編集手帳 読売新聞
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9.05.2010

花板「みんなで仲良く」清潔さでも料理でもしくじって・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 首相のことを「宰相」ともいう。白川静氏の『常用字解』によれば「宰」の字は、屋根(ウ冠)の下に包丁(辛)を置いた形であるという。料理屋で言えば首相とは、板場を仕切る最上位者「花板(はないた)」かも知れない

 菅さんが花板を務める料亭「民主」はいまのところ、清潔なだけが取り柄(え)である。肝心の料理を褒める人はそう多くないが、手をきちんと洗わない板前を板場から締め出していることで、客の評判を何とか保っている

 「料理の腕は俺が上だぜ」――締め出され組の小沢さんが次期花板に名乗り出て大騒ぎになった

 そこに「まあまあ、ご両人、みんなで仲良く板場に立って“挙板態勢”で参りましょう」と、清潔さでも料理でもしくじって辞めた前花板・鳩山さんが割り込んで話を余計ややこしくする。「みんなで仲良く」が手を洗わぬ板前にも調理させることを意味する以上、清潔さだけで料亭支持率を保っている菅さんが「うん」と言うはずもない。店内の声を聞いて花板を決めることに落ち着いたのは良かった

 菅さんは料理の腕を磨くべし。小沢さんは手を洗うべし。客の注文はそれに尽きる。

 9月1日付 編集手帳 読売新聞
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