2.28.2009

在日米軍の抜けた「アジアの平和と安全」覚悟しなくてはならない・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 作家の久世光彦(くぜてるひこ)さんが語ったことがある。「西條(さいじょう)八十(やそ)と服部良一がいなかったら日本人は復興しそこねていただろう」と。戦後復興の歩みは、両氏の作詞・作曲した「青い山脈」の歌声と切り離せない

 米海軍第7艦隊の旗艦は名を「ブルー・リッジ」(青き尾根、の意)という。横須賀を母港とする旗艦が賓客などに演奏して聞かせる“艦歌”は「青い山脈」であると、司馬遼太郎さんが「時代の風音」(UPU)に書いている。いまもそうらしい

 〈古い上衣(うわぎ)よ さようなら…〉と、戦後復興の陰の功労者であった在日米軍を、もはや用済みの服に見立てたわけでもあるまい。民主党の小沢一郎代表が「アジアの平和と安全には第7艦隊があれば十分で、陸空軍も海兵隊も要らない」とも聞こえる発言をし、与野党に反発と困惑の波紋を広げた

 米軍の抜けた穴を日本が自力で補うには膨大な予算と、時間と、軍備増強が招く対外摩擦を覚悟しなくてはならない。いかなる覚悟があっての発言だろう

 古い上衣は脱ぎましょう、新しい上衣は知らないよ――では、首相を志す人の言葉としていささか心もとない。

2月28日付 編集手帳 読売新聞
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2.27.2009

別れが消え“つながりっぱなし”の文化・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 〈汽車の窓から手をにぎり/送ってくれた人よりも/ホームの陰で泣いていた/可愛(かわ)いあの娘(こ)が忘られぬ…〉と昔の流行歌「ズンドコ節」にある。列車の窓が開かない今、こういう別れの光景も目にしなくなった

 窓のせいではない、携帯電話のせいだと、ジャーナリストの徳岡孝夫さんが月刊「文芸春秋」に「別れが消えた」と題する随筆を寄せたのは2年半ほど前である

 親指ひとつで、さっき別れた人にメールが送れる。すぐに返信が来る。駅に出向いて泣いたり、手を握ったりするまでもない。「ケータイは人から別離を奪った。別離の後に必ず来る孤独をも奪った」と

 別離のいとまがない“つながりっぱなし”の文化はさらに底辺を広げたようで、文部科学省の調査によれば中学2年生の約2割が日に50通以上のメールを送受信し、入浴中も携帯電話を手放せない子供がいるという

 いつか散るから花がいとおしいように、別離と孤独があるから人もいとおしい。ホームの陰で泣いてくれる「可愛いあの娘」がいたわけではないが、携帯電話のない時代に青春期を過ごせたことを幸せに思うときがある。

2月27日付 編集手帳 読売新聞
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2.26.2009

プロレス中継、半世紀余り、地上波から姿を消す・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 日本の電気掃除機で過去に最も名前の売れた機種は三菱電機の「風神」といわれる。「ただいまリング上を掃き清めておりますのは『風神』であります」。往年のプロレスファンはご記憶のことだろう

 昭和40年代の初め、日本テレビのプロレス中継では対戦の合間に生のCMが入った。飛び散った汗の掃除は雑巾(ぞうきん)のほうが…と子供心に思わぬでもなかったが、ジャイアント馬場の登場を待ちつつ聞いたリングアナウンサーの声は今も耳に残っている

 ある人はテレビや掃除機などの電化製品が一つ、また一つと増えていったわが家の遠い昔を瞼(まぶた)に浮かべる。ある人は、画面の力道山と一緒に体を動かしていた祖父母の面影を偲(しの)ぶ。プロレス中継という鍵でひらかれる記憶の扉はさまざまだろう

 日本テレビが日曜深夜に放送しているプロレス中継が来月で終わり、地上波から姿を消す。定期中継がはじまって半世紀余り、見る人が減ったためという

 歌人の島田修三さんに一首がある。〈女房のコブラツイスト凄(すご)きかな戯れといへ悲鳴ぞ出(い)づる〉。そういえば、その技を初めて目にしたのも日本テレビの中継だった。

2月26日付 編集手帳 読売新聞
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2.25.2009

「被害者遺族の心情」真相を語った手紙を書きなさいその時が来たら・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 谷川俊太郎さんに「真犯人に」という詩がある。〈時効まで待ってあげよう/あなたは臆病者にちがいないから/手紙を書きなさいその時が来たら/歴史に宛てて一通の手紙を書きなさい/あなたの十五年間の油汗で〉

 「松川事件」が起きたのは1949年(昭和24年)である。福島県内の東北線でレールの一部が破壊されて列車が転覆し、3人が死亡した。詩はその14年後、犯人不明のまま時効が1年先に迫ったころに書かれている

 手紙を書きなさいと犯人に告げたい事件はほかにもある。6年前に時効が成立した朝日新聞阪神支局襲撃事件もそうである

 「週刊新潮」が連載した実行犯を名乗る人物(65)の手記は、真犯人による「歴史あての手紙」なのかどうか。事件の当事者である朝日新聞は手記の疑問点を検証記事で列挙し、「創作としか思えない話」と述べている

 告白が偽りならば被害者遺族の心情をおもちゃにしたことになる。そうではない、真相を語った手紙だというのならば、反論に堪える第二信がなくてはなるまい。谷川さんの詩の後段から一節をひく。〈事実に帰りなさいただ事実だけに〉

2月25日付 編集手帳 読売新聞
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2.24.2009

「おくりびと」死者の霊を鎮める、残された生者を皆でいたわる・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 弔問のあいさつはむずかしい。頭を下げ、聞き取れないほどの低い声で、「黒足袋(くろたび)、白足袋(しろたび)」と言え。作家の吉村昭さんはそう教わったという

 すべての弔問客が言語明(めい)瞭(りょう)に悲しみを語れば、聴く遺族の心身がもたない。無意味なつぶやきもときには思いやりだろう。葬礼とは死者の霊を鎮める「鎮魂の儀式」であるとともに、残された生者を皆でいたわる「絆(きずな)の儀式」でもある

 女性を殺して遺体を無残に切断した男に先週、東京地裁で無期懲役の判決(求刑・死刑)が言い渡された。死刑が相当かどうかは殺した後の残酷さではなく、殺すまでの残酷さで判断するのだという

 法解釈はともかくも、判決からは遺族に寄せる「黒足袋…」程度のいたわりも感じることができない。わが子を切り刻まれ、下水に流された親は明日をどう生きればいいのだろう

 折しも、遺体をひつぎに納める納棺師を主人公に、死を通して命の尊さと人の絆を描いた映画「おくりびと」(滝田洋二郎監督)が、米国アカデミー賞・外国語映画賞に輝いた。本木雅弘さん演じる納棺師のおごそかな、いたわりの所作が眼底によみがえる。

2月24日付 編集手帳 読売新聞
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2.23.2009

仕事に「生き甲斐」「お金」がなくなったら・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 なぜ仕事をするのか――3人が答える。最初の若者は「お金のため」と言う。次の人は「生き甲斐(がい)だから」と。最後に、農業を営むおじいさんがしみじみと語る。「仕事は神聖なものだ」

 小学生の頃、道徳の授業で見た教育テレビの番組を今も覚えている。何十年かが過ぎ、第3の回答の達観には遠く及ばず、第1と第2の心境を行き来している

 国家公務員制度改革の行方が心配でならない。業界と癒着した天下りなどの特権や、非効率なお役所仕事を改めるのは当然としても、与野党が選挙目当てで官僚たたきを競い合うのには閉口する。優秀な人材が公務員にならず、官僚が仕事に生き甲斐を感じなくなったら、日本は沈没し、困るのは国民である

 近年、公務員人気は低落傾向にあった。その中では優秀な志望者が多く、「霞が関で独り勝ち」との評さえある外務省でもエリートが中途退職し、高給の民間企業に転職していると聞く

 麻生首相は「官僚は使いこなすもの」が持論だ。御説ごもっとも、たたくのでなく、上手に使うのが筋だろう。酒癖の悪い閣僚を使いこなせなかった人の御説ではあるが…。

2月23日付 編集手帳 読売新聞
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2.22.2009

「柔道JUDO」日本文化を自信をもって世界に広げるために・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 講道館柔道の創始者である嘉納治五郎は、日本の英語教育の先駆者でもあった。昭和の初め、文部省が中学校の英語の時間数を半減しようとした際には、日本英語協会の会長として反対行動を起こしている

 無論、欧米の信奉者ということではなく、日本文化を自信をもって世界に広げるために英語力は欠かせぬ、と嘉納翁は考えていたようだ。柔道が「JUDO」として発展した素地は、そうした教育哲学の中にも見いだせるだろう

 講道館の館長職は、これまで4代、嘉納家が継いできた。だが、現在の嘉納行光館長が勇退を表明し、モントリオール五輪金メダリストの上村春樹氏に引き継がれる見通しだ。柔道の表舞台から「嘉納」の大看板が消える

 カラー柔道着の導入に続き、選手の強弱を点数化したポイントランキング制が採用されるなど、世界の柔道は日本的な武道の姿から離れつつある。嘉納の威光に頼ることなく「道を講ずる館」からその理念をどう発信するか、むずかしい時代になった

 JUDOを反訳した時に、柔道ではなくジュードーになってしまうようでは、嘉納翁はたぶん許すまい。

2月22日付 編集手帳 読売新聞
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2.21.2009

命の尊さを忘れた医療現場での事故・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 以前、本紙に載った歌がある。〈仕方なく堕(おろ)そうとした子供より真心こもる介護うけゐつ〉。作者は86歳の女性である。何かの事情から、産むか、産まないか、迷った昔があったのだろう

 あのとき、人工中絶を選んでいればこの世にいなかったはずの子が、いまでは老いたわが身の世話をしてくれる。歳月の感慨と、お腹(なか)に宿った命の芽の尊さをうたって一読、忘れがたい

 その尊さを忘れた医療現場での事故である。香川県立中央病院で不妊治療を受けていた女性患者に、別の患者のものとおぼしき体外受精の受精卵を医師が誤って移植した。女性は結局、人工中絶のやむなきに至ったという

 うかつにも作業台に受精卵の容器を複数置き、取り違えたという。人を幸福にする高度な技術を身につけながら、「整理整頓」という小児並みの約束ごとが守れぬばかりに悲劇を招く。人類とは利口なのか、馬鹿(ばか)なのか、分からなくなるときがある

 取り違えがなければ、妊娠9週目で生を終えた命は、本来移植されるべき母の胎内で育っていたか。何十年か後に、老いた親を優しく介護する子であったかも知れない。

2月21日付 編集手帳 読売新聞
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2.20.2009

「無責任」最後に頭をなでてもらったのはいつだろう・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 ドイツの哲学者、アルトゥール・ショーペンハウアーはプードルを友とした。「アトマ」(世界精神)という名前だが、その犬に腹を立てたときは「人間」と呼び、「おまえも人間でしかないのか」と悪態をついたという

 イタリアの哲学研究者ピエトロ・エマヌエーレ氏が「この哲学者を見よ」(中央公論新社)につづった挿話にある。万物の霊長も形無しだが、人間嫌いの哲学者に同調したくなるような無責任な飼い主もときにはいる

 ヨミウリ・オンラインの地域版で読んだ記事が胸を離れない。秋田県内で保護された犬と猫36匹が県の動物管理施設で「殺処分」される、その現場に立ち会った記者のルポである

 6匹の子をもつ、やつれた母犬がいた。麻酔の注射で意識が朦朧(もうろう)とした母犬を職員が優しくなでる。親子を隔てた壁を取り去ると、ふらふらしながら子犬たちのもとに寄り添ったという

 記事には、子犬たちを抱くようにして身を横たえ、授乳をする母犬の写真が添えられている。もとの飼い主の手で最後に頭をなでてもらったのはいつだろう。偏屈な哲学者にならって、「人間め!」とつぶやく。

2月20日付 編集手帳 読売新聞
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2.19.2009

「市民の社会常識」残酷な場面にも立ち会うことになる・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 原作の小説は夢中で読みふけったのに、映画には食指が動かない、そういう作品がある。猟奇殺人を描いたT・ハリス「羊たちの沈黙」や、恐竜が人を襲うM・クライトン「ジュラシック・パーク」は映画では見ていない。流血の場面を苦手にしている

 「いい年をして」「男のくせに」とばかにされても映画ならば見ずに済ます手もあるが、裁判員になるとそうもいかない。動悸(どうき)にあえぐ経験もするだろう

 東京都江東区のマンション自室で2部屋隣に住む女性を殺害した男に、きのう、東京地裁で無期懲役の判決が言い渡されたが、証拠調べでは遺体断片の写真が大型モニターに映し出されたという。そういう法廷にも裁判員は立ち会うことになる

 「市民の社会常識」をプロの裁判官が自前で身につけてくれさえすれば、心臓に悪い経験を市民が味わう必要もないわけで、アマの手を煩わせないと職務が全うできないプロとは何なのさ…と、制度の始まる前から愚痴のひとつも言ってみたくなる

 裁判員に選ばれたらきっと残酷な場面にも耐性ができて、見る映画の間口が広がるだろう。別に、うれしくもない。

2月19日付 編集手帳 読売新聞
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2.18.2009

醜態会見「野党に喜ばれ、感謝される首相」がけっぷちに追い詰められて・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 「丸い四角形」はない。「銅製の鉄器」もない。形容矛盾という。では、この発言はどうだろう。「病院でゆっくり休みながら、この仕事に全力を傾注する…」

 ローマで“醜態会見”をした中川昭一財務相が引責辞任した。最初は来年度の予算案が衆院を通過するまでは職にとどまるつもりで、記者会見でもそう語っていた。病院でゆっくり休みながら全力を傾注できる閣僚の仕事がこの世にあるならば、「丸い四角形」だってあるだろう

 案の定、野党のみならず与党からも即刻辞任を求める声が噴出し、辞意表明だけで済まなくなった。病床で粉骨砕身するという中川氏の悲壮な、もしくは滑稽(こっけい)な決意を麻生首相がどうして認めたか、首相の了見が分からない

 もっと早く動けば中川氏には潔いイメージを、首相自身には果断のイメージを残して幕が引けたはずである。決断を渋った揚げ句、がけっぷちに追い詰められて腹をくくるという最も傷の深い脚本を選び、役を演じた

 「野党に喜ばれ、感謝される首相」という表現は以前ならば、「丸い四角形」並みの形容矛盾であったろう。今はどうだか知らない。

2月18日付 編集手帳 読売新聞
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2.17.2009

朦朧とした表情でしどろもどろの発言、世界に流れ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 冬の夜、町内の旦那(だんな)衆が火の用心で番小屋に詰めている。寒さしのぎに土瓶の燗酒(かんざけ)でこっそり酒盛りを始めた。そこに見回りの役人が現れたからさあ大変、「風邪薬を煎(せん)じておりました」と言い逃れたものの…落語「二番煎じ」である

 こちらは言い逃れではなしに、風邪薬の飲み過ぎという。ローマでの先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)閉幕後、中川昭一財務相が朦朧(もうろう)とした表情でしどろもどろの発言をした記者会見の波紋が収まらない

 酒好きで知られ、国会の財政演説で26か所の読み間違いをした際も“深酒疑惑”がささやかれた。「朦朧」の上に「酔眼」の二文字を置いて、会見の問答に聴き入った方も多かろう

 酒はぬれぎぬで土瓶の中身が風邪薬であったにせよ、用心をおろそかにして火難の憂いを招いた結果は同じである。あの映像が世界に流れ、日本の信用は一部が焼け落ちて灰になった。猛省して、しすぎることはない

 漢字の読み方であったり、風邪薬の飲み方であったり、麻生政権というのは頼みもしないのに、いろいろなことを教えてくれる内閣である。ありがたくて涙が出る。

2月17日付 編集手帳 読売新聞
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2.16.2009

関心をひきつけ、見返りを引き出そうとする・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 昨年8月に脳卒中を起こした、とされる北朝鮮の金正日総書記の体調について、米国のブレア国家情報長官が、「著しく回復し、主要な政策決定を下している」との分析評価を、議会に提出した

 このごろ盛んに「将軍さま」の写真が公表されているから、そうなのだろうと察してはいた。最高人民会議の代議員候補者に推戴(すいたい)され、国防委員長として軍首脳人事を決定するなど、最高権力者の地位に揺らぎはないようだ

 テポドン・ミサイルの発射準備を進めている、との物騒な情報も流れている。友邦イランが初の国産人工衛星を打ち上げるや、北朝鮮の党機関紙はすかさずエールを送った。こちらも間もなく続くという意思表示か

 米国の関心をひきつけ、見返りを引き出そうとする「求愛行動」に見えなくもない。熱い視線は、今日から日本を訪れるヒラリー・クリントン米国務長官に向いていよう

 ヒラリーさんの親友オルブライト元国務長官は、2000年に訪朝し、金総書記から大歓待を受けたが、何らの成果も得られなかった。ゆめ、北朝鮮には幻惑されぬよう、米国は厳しい姿勢を示してもらいたい。

2月16日付 編集手帳 読売新聞
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2.15.2009

天空に浮かぶ「きぼう」に滞在中も宇宙から希望を届けたい・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 〈西暦2009年となった。少年の日、その時自分は、既にこの足で火星の上に立っているつもりでした〉。漫画家の松本零士さんが、近く宇宙に飛び立つ若田さんに宛(あ)てたメールの書き出しだ

 本紙ホームページで「若田光一との対話ブログ」が始まった。松本さんは、現実の進歩が思ったより遅いことを少し嘆きつつ、日本人の長期宇宙滞在が実現することを喜ぶ、その複雑な思いを次の一言に込めている。〈ああ、自分も今、小学生だったらなぁ〉

 若田さんの返信には、「銀河鉄道999」など松本作品から宇宙への夢とあこがれをもらったように、宇宙から希望を届けたいとある。松本さんら6人の対談者は、若田さんが天空に浮かぶ「きぼう」に滞在中も公開メールを交わす。宇宙と地球の間でどんなやりとりになるのか、楽しみだ

 球児だった若田さんには野球のボールも一つ、託された。その中に松本さんの思いを継ぐ小学生の夢やメッセージが埋め込まれている。国際宇宙ステーションで宇宙飛行士たちが投げ、受ける

 言葉と夢のキャッチボールは子どもたちの胸にくっきり焼き付くことだろう。

2月15日付 編集手帳 読売新聞
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2.14.2009

精神の疲労は酒を求め、肉体の疲労は甘味を求める・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 酒も菓子も好む甘辛の両刀遣いを、俗に「雨風(あめかぜ)」という。上方落語に由来する言葉らしい。きょうは普段の辛口一刀流を休み、奥様や娘さんから贈られたチョコを口に運ぶお父さんもいるだろう

 「精神の疲労は酒を求め、肉体の疲労は甘味を求める」と語ったのは作家の開高健さんである。職探しに、会社の立て直しに、精神も肉体も疲れた人が世にあふれ、「雨風」の一語がこれほど胸に響く2月14日もない

 「郵政民営化にじつは反対だった」と口を滑らせて小泉元首相に愛想づかしされた麻生首相も、雨風の吹き降る中にいる。就任当初の辛辣(しんらつ)な野党批判の「辛さ」はともかくも、わきの「甘さ」は余計だった

 首相はもっと言葉というものを…いや、ご本人が重々承知だろうからやめておこう。読者の皆さんもロマンチックな日に無粋な繰り言は望んでおられまい

 青春の傷跡がうずく工藤直子さんの詩「痛い」をひく。〈すきになる ということは/心を ちぎってあげるのか/だから こんなに痛いのか〉。心をちぎって応援してきた麻生ファンも、この雨風は痛かろう…ああ、また言ってしまった。

2月14日付 編集手帳 読売新聞
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2.13.2009

「裁判員制度」刑事裁判に市民の常識を反映させる・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 短編小説を書く作業をたとえて、「空気を搾り、一滴の水をしたたらす」と評したのは司馬遼太郎さんである。それほどのエネルギーが要る、と。作家の心組みを語って見事である

 同じ形容も、作家ではなく国家の仕事にあてはめると、いくらか趣が異なる。空気を搾って水をしたたらせるような政策には誰しも、「水が欲しければもっと効率のいい方法があるでしょうに…」と首をひねるだろう

 あと3か月ほどで「裁判員制度」が始まる。刑事裁判に市民の常識を反映させるという。反映させたければ、研修や内省を通して裁判官がみずからの心に井戸を掘り、常識という水を汲(く)み上げれば済むことで、日本全土の空気を搾るまでもあるまい

 視力に自信がなくて患者の症状を見逃すのが心配なお医者さんはメガネをかけるだろう。目のいいご町内のみなさまに医療知識のイロハを教え、守秘義務の順守を誓わせ、交代で診察を手伝わせるようなことはしない。裁判員制度では、それをする

 選ばれたときには、微力ながらも誠実に務める心づもりはできている。「水の作り方」に納得したかどうかは別である。

2月13日付 編集手帳 読売新聞
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2.12.2009

「腰砕け」閣僚の椅子に執心して信念を曲げた人・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 大相撲の決まり手は「四十八手」と言われるが、次第に増えて現在は87手を数える。82手は勝者のかけた技、残る5手が敗者の自滅で「非技」という

 〈勇み足〉や〈腰砕け〉は日常の会話にも使われる。バランスを崩した〈つき手〉〈つき膝(ひざ)〉、戦意なく後退して土俵を割る〈踏み出し〉と非技もいろいろだが、観客には興ざめの決まり手であることに変わりはない

 野党に技をかけられたのならばまだしも、勝手にこけた首相の〈つき手〉で黒星を喫しては、閣僚や与党幹部が顔をしかめるのも分かる。本紙の世論調査で、麻生内閣の支持率が19・7%と2割を切った

 麻生首相の郵政発言が響いたとみられている。小泉内閣で郵政民営化を決めたときに閣僚でいた人がこの期に及んで、「じつは私は反対だった」などと語る必要はどこにもなかった。首相は発言を修正したが、「閣僚の椅子(いす)に執心して信念を曲げた人」という印象をひと時でも国民に植えつけたのは痛手だろう

 ふんどしならぬ口もとをきりりと締め直さねば、いずれ迎える総選挙の大一番で非技〈踏み出し〉の憂き目を見ないとも限らない。

2月12日付 編集手帳 読売新聞
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2.11.2009

笑いとは防衛解除「いないいないばあ」・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 「いないいないばあ」で幼児は笑う。「いないいない」で母の消える不安が生じ、「ばあ」で安堵(あんど)する。「笑いとは防衛解除のことである」と文芸評論家の三浦雅士さんが「青春の終焉(しゅうえん)」(講談社)に書いている◆第一生命保険が全国から募るサラリーマン川柳を毎年の愉(たの)しみにしてきた。ニヤリとし、ときに噴き出すのも防衛解除の心理作用かも知れない◆10年ほど前の作品、〈この俺(おれ)を 雇わないとは 目が高い〉。俺の能力を見抜くとはさすがだね――就職の失敗という緊張が、自分自身を笑いのめす作者の心の余裕に触れて解除される。以前はそうだった◆今年の入選100作品を読み、笑いどころを探すのに苦労している。作品の問題ではなく、現実があまりに深刻なせいだろう。〈仕事減り 休日増えて 居場所なし〉や〈昼食は 低カロリーより 低コスト〉に「うまいな」と感心しつつ、現実味の醸し出す緊張は解除してもらえないまま胸に残った◆「ユーモリストとは不機嫌を上機嫌にぶちまける人のことだ」と、フランスの作家ルナールは語っている。上機嫌であることが至難のご時世である。

2月11日付 編集手帳 読売新聞
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2.10.2009

常識が〈銹〉ついたか、公益法人を私有物と〈錯〉覚したか・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 秀でる、優秀などの例をひくまでもなく「秀」は好ましい字だが、金偏が寄り添うと「銹(さび)」で、ざらざらサビつく。初々しい「昔」も、金偏がつけば錯覚の「錯」に変わる。漢字も、人も、金を得て道を誤るものらしい

 子供たちの漢字離れに歯止めをかけよう――と事業を興した〈昔〉の志は称(たた)えていいだろうし、「今年の漢字」を歳末の風物詩に育て上げた商才も〈秀〉の折り紙つきだが、金偏ひとつで評価は急降下せざるを得ない

 税金を優遇してもらう代わりに多額の利益を禁じられている公益法人の身で“もうけすぎ”の体質が改まらないとして、財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市、大久保昇理事長)が文部科学省の立ち入り検査を受けた

 理事長親子が代表を務める四つの会社に対して協会から、業務委託費として過去3年間に約66億円もの金が支払われている。常識が〈銹〉ついたか、公益法人を私有物と〈錯〉覚したか、そう疑われても仕方あるまい

 昨年の暮れ、京都の清水寺で揮毫(きごう)された「今年の漢字」は〈変〉、第2位は〈金〉、第3位は〈落〉…「今年の漢検」そのままである。

2月10日付 編集手帳 読売新聞
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2.08.2009

「変化する悪知恵ウイルスとの戦い」撲滅するまで容赦は要らない・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 「イタチごっこ」は昔の子どもの遊びだ。広辞苑によれば、二人が互いに相手の手の甲をつねって自分の手をその上に載せながら、いたちごっこ、ねずみごっこ、と唱えて繰り返す

 転じて、双方が同じ事を繰り返すばかりで無益なこと、を意味するようになった。だが、この言葉を振り込め詐欺と取り締まりの関係に用いると、卑劣な行為を楽しむがごとき犯人たちを、さらに増長させそうでよくない

 株価の下落がニュースになれば、息子を名乗って「すぐ損失を弁済しなければならない」と訴える。社会保険庁の不祥事があれば「年金支給の手続きに必要です」などと言って、お金を振り込ませる。連中の手口はインフルエンザ・ウイルスのように変化(へんげ)する

 最近はATMの警戒が厳しくなったと見るや、お金を直接受けとる手口が増えてきた。警察はこれを逆手に、職員の家族などにかかってきた電話を利用して「騙(だま)されたふり作戦」を展開中だ。さっそく犯人逮捕の成果を上げた

 悪知恵に対抗するにはそれ以上の知恵が要る。子どもの遊びではなく、ウイルスとの戦いだ。撲滅するまで容赦は要らない。

2月8日付 編集手帳 読売新聞
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2.07.2009

「産んだ覚えはないぞ」濡れ衣をかぶせられると、おれは面白くない・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 歌人の土屋文明は一首に詠んでいる。〈この母あり父ありて吾(われ)ぞありたりし亢(たか)ぶり思ふべきことにもあらじ〉。母がいて、父がいて、お陰でいまの自分がある。胸を高ぶらせて語ることでもないが、と

 3年半前、小泉政権下の「郵政選挙」で自民、公明の与党両党は衆議院の3分の2を超す大量の議席を得た。麻生政権もその獲得議席から生まれている。民営化を支持した民意が麻生首相のいわば父であり、母である

 民営化で発足した日本郵政グループ、4分社化体制の見直しに首相が言及した。改革の進み具合を検証する「見直し規定」が法律にあるものの、民営化路線の根幹をなす経営形態を改めるのならば、まずは父母に相談すべきだろう

 小泉政権の閣僚だったあなたがなぜ、緒に就いたばかりの分割民営化を見直すのか――と問われて首相は、「自分は反対だった。濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)をかぶせられると、おれは面白くない」と答弁で気色ばんだ。「産んでくれと頼んだ覚えはないぞ」と親に悪態をつく子供とどこが違うだろう

 民営化の絵図面を描き直したいのであれば、解散・総選挙で父母の意思を問えばいい。

2月7日付 編集手帳 読売新聞
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2.06.2009

だます側は用心を突き崩すあの手この手を繰り出してくる・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 〈ポケットのなかには/ビスケットがひとつ/ポケットをたたくと/ビスケットはふたつ…〉。たたくたびに、ビスケットがふえていく。まど・みちおさんの詩「ふしぎなポケット」である

 あれば愉(たの)しいと、おとなも思う。ビスケットの代わりに資産がふえていく魔法のポケットを装い、「使っても減らないお金」を売りものにしていたという

 「円天」と称する疑似通貨を宣伝材料にして高配当をうたい、出資者から多額の金をだまし取ったとして「L&G」の会長、波和二(なみかずつぎ)容疑者(75)ら22人が組織的詐欺の疑いで逮捕された。総額は1000億円を超すという

 ふしぎなポケットがこの世にないのは誰もが知っているし、甘言には用心もしていよう。芸能人を“広告塔”に使った派手な宣伝や、疑似通貨という新手の小道具など、だます側は用心を突き崩すあの手この手を繰り出してくるから油断がならない

 逮捕の朝、容疑者の会長は自宅近くの飲食店でビールを飲みつつ、「詐欺だったらこんなに堂々とできるか」と、報道陣を相手に3時間の弁舌をふるった。減らないのはお金ではなく、口のほうらしい。

2月6日付 編集手帳 読売新聞
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2.05.2009

「しあわせの書」変幻自在なトリックで読者を魅了・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 本名を厚川昌男という。あつかわまさお――文字を並べ替えて「あわさかつまお」、推理作家の泡坂妻夫さんである。遊びの愉(たの)しさを至芸の域にまで高め、変幻自在なトリックで読者を魅了したその人らしい命名である

 生半可な遊び心ではない。例えば「しあわせの書」(新潮文庫)ではひらくページすべてに、ある仕掛けが隠されている。真似(まね)しろと言われたら脳みそが卒倒しそうな仕掛けが何かは、実際にお読みいただくしかない

 東京・神田の紋章上絵師(うわえし)、和服の家紋を描く職人の家に生まれた。幼いころ、縁日の夜店で見た手品で人を驚かせる喜びを知ったことが創作の原点になったという

 「乱れからくり」など数々の本格物には、職人肌の凝り性と奇術師の妙技が溶け合っている。貴公子風の名探偵・亜愛一郎(ああいいちろう)や、謎の外国人ヨギ・ガンジーの明察に、夜の更けるのを忘れてページを繰った方も多かろう

 遊び、みずから愉しみ、その愉楽を一作ごとに読者と分け合って泡坂さんが75歳で逝った。幾何の難問を解き終えたような心地よい読後感は、色あせることのない紋章として読者の心に残るだろう。

2月5日付 編集手帳 読売新聞
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2.04.2009

「天下りの根絶」霞が関は死に物狂いで抵抗する・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 豊臣秀吉「一夜城」の伝説が、墨俣(すのまた)(岐阜県)や石垣山(神奈川県)に残っている。暮れ方には何もなかった山の上に朝靄(あさもや)をついて巨大な城郭が姿を現せば、人々は目を疑ったことだろう

 ピラミッドの石組みを崩し、円柱形に組み直す作業も、むずかしさの度合いでは秀吉の一夜城に劣らない。麻生首相の明言した「天下り斡旋(あっせん)の年内全廃」とはそういう大工事である

 同期が出世するにつれ、多くの人が定年前に退職していく諸官庁は、入省年次の最も古い次官を頂点に、新人を底辺にもつピラミッドである。天下りの全廃で、出世コースを外れた官僚も定年まで勤めることになる。円柱形への移行を嫌い、霞が関は死に物狂いで抵抗するだろう

 汚職の温床、天下りの根絶にかける首相の意気やよし…としても、綿密な設計図と不動の信念なくして工事の成功は期しがたい

 石垣山の一夜城は樹林の中に骨組みをつくり、紙を張って白壁と見せかけ、周囲の樹木を一夜のうちに伐採して出現させた“張り子の城”であったとも伝えられる。首相がドンと胸を叩(たた)いた「11か月城」が、張り子に終わらぬことを祈る。

2月4日付 編集手帳 読売新聞
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2.03.2009

退職金の出る「解雇」妙な暴露だけはしないでくれよ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 数ある大相撲の決まり手の一つに「合掌ひねり」がある。片方の手を相手の腋(わき)の下から差し、肩の上からまわしたもう片方の手と合掌するように組み合わせてひねり倒す

 大麻所持で逮捕された十両力士、若麒麟真一容疑者に日本相撲協会が下した処分も、協会が祈るように手を合わせた合掌ひねりと映らなくもない。退職金の出ない「除名」を見送り、退職金の出る「解雇」にとどめた

 善意に解釈すれば「まだ25歳、第二の人生を考えると除名はかわいそう」(武蔵川理事長)と温情を示し、更生を祈ったのだろう。別の、意地のわるい解釈もできる

 リンチ死事件の記憶が生々しく残り、八百長疑惑が裁判になり、相撲界の内実に世間の耳目が集まっている時である。退職金はもらえるようにしてやったのだから、妙な暴露だけはしないでくれよ、そう祈って手を合わせた処分と疑うこともできる。下世話な勘ぐりであればいい

 薬物汚染、“かわいがり”体質、横綱の品格…協会は角界不信の「三所(みところ)攻め」にさらされているさなかである。紛らわしい「合掌ひねり」よりも明快な「突き出し」が見たかった。

2月3日付 編集手帳 読売新聞
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2.02.2009

安全と安心への願いを込めて闇を照らす「青の光」・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 病苦を除く薬師如来は、瑠璃(るり)光とも呼ばれる。瑠璃は群青色の宝石ラピスラズリのことで、仏教の七宝の一つだ。薬師如来を教主とする東方の浄土は、青い瑠璃の大地から成ると仏典は伝えている

 チルチルとミチルが追う「青い鳥」は、メーテルリンクによって幸せの象徴として描き出された。中国やロシアには、不思議な青い花を題材にした物語もある。「青」は古今東西、神秘的な色と考えられてきたようだ

 犯罪防止の心理的効果を狙って青色照明の防犯灯を導入する地域が増えている。英国の経験が参考とされた。最近では自殺の防止を目的に、一部の駅のホームや踏切にも青色灯が設置されている

 青い色は気持ちを落ち着かせるとの実験データがあるそうだ。青色灯を設置した地域周辺で犯罪が減ったとの報告もある。しかし、青色灯を導入するほど防犯活動に熱心な地域だから犯罪が減少したとの見方も成り立つ。効果についてはまだ科学的に十分な立証はなされていない

 ともあれ青い光に地域の凛(りん)とした空気を感じる人は多いだろう。安全と安心への願いを込めて闇を照らす「瑠璃の光」である。

2月2日付 編集手帳 読売新聞
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2.01.2009

日夜真摯に医療に取り組む多くの医師・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 「医師会員の3分の1は(利益を重視する)欲張り村の村長だ」。そう言ったのは他でもない、日本医師会を長く率いた故・武見太郎氏である。3分の1が国民のための医療に邁進(まいしん)する医師で、残り3分の1はどちらとも言えないという

 おそらく、お医者さんを三つのタイプに分けたなら…という趣旨であろう。実際にそのような統計があるわけではない。真摯(しんし)に医療に取り組む医師は、3分の1よりずっと多いはずだ

 日医と本紙が共催する「心に残る医療体験記コンクール」の入賞作が1月29日付の朝刊に掲載された。認知症が進む義母への接し方を身をもって教えてくれた精神科医。老いた父の病状悪化に深夜でも駆けつけてくれた若い女性医師。そうしたすばらしいお医者さんと出会った患者たちの珠玉の体験集である

 欲張り村の村長は今もいる。医療ミスを隠し、患者をないがしろにするような病院も、残念ながらある。一番歯がゆい思いをしているのは「心に残る医療」に日夜取り組む多くの医師だろう

 このコンクールに毎年2000編以上の応募があることがうれしい。だが、もっと読みたい。

2月1日付 編集手帳 読売新聞
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