2.17.2009

朦朧とした表情でしどろもどろの発言、世界に流れ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 冬の夜、町内の旦那(だんな)衆が火の用心で番小屋に詰めている。寒さしのぎに土瓶の燗酒(かんざけ)でこっそり酒盛りを始めた。そこに見回りの役人が現れたからさあ大変、「風邪薬を煎(せん)じておりました」と言い逃れたものの…落語「二番煎じ」である

 こちらは言い逃れではなしに、風邪薬の飲み過ぎという。ローマでの先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)閉幕後、中川昭一財務相が朦朧(もうろう)とした表情でしどろもどろの発言をした記者会見の波紋が収まらない

 酒好きで知られ、国会の財政演説で26か所の読み間違いをした際も“深酒疑惑”がささやかれた。「朦朧」の上に「酔眼」の二文字を置いて、会見の問答に聴き入った方も多かろう

 酒はぬれぎぬで土瓶の中身が風邪薬であったにせよ、用心をおろそかにして火難の憂いを招いた結果は同じである。あの映像が世界に流れ、日本の信用は一部が焼け落ちて灰になった。猛省して、しすぎることはない

 漢字の読み方であったり、風邪薬の飲み方であったり、麻生政権というのは頼みもしないのに、いろいろなことを教えてくれる内閣である。ありがたくて涙が出る。

2月17日付 編集手帳 読売新聞
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