酒も菓子も好む甘辛の両刀遣いを、俗に「雨風(あめかぜ)」という。上方落語に由来する言葉らしい。きょうは普段の辛口一刀流を休み、奥様や娘さんから贈られたチョコを口に運ぶお父さんもいるだろう
「精神の疲労は酒を求め、肉体の疲労は甘味を求める」と語ったのは作家の開高健さんである。職探しに、会社の立て直しに、精神も肉体も疲れた人が世にあふれ、「雨風」の一語がこれほど胸に響く2月14日もない
「郵政民営化にじつは反対だった」と口を滑らせて小泉元首相に愛想づかしされた麻生首相も、雨風の吹き降る中にいる。就任当初の辛辣(しんらつ)な野党批判の「辛さ」はともかくも、わきの「甘さ」は余計だった
首相はもっと言葉というものを…いや、ご本人が重々承知だろうからやめておこう。読者の皆さんもロマンチックな日に無粋な繰り言は望んでおられまい
青春の傷跡がうずく工藤直子さんの詩「痛い」をひく。〈すきになる ということは/心を ちぎってあげるのか/だから こんなに痛いのか〉。心をちぎって応援してきた麻生ファンも、この雨風は痛かろう…ああ、また言ってしまった。
2月14日付 編集手帳 読売新聞
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