2.18.2009

醜態会見「野党に喜ばれ、感謝される首相」がけっぷちに追い詰められて・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 「丸い四角形」はない。「銅製の鉄器」もない。形容矛盾という。では、この発言はどうだろう。「病院でゆっくり休みながら、この仕事に全力を傾注する…」

 ローマで“醜態会見”をした中川昭一財務相が引責辞任した。最初は来年度の予算案が衆院を通過するまでは職にとどまるつもりで、記者会見でもそう語っていた。病院でゆっくり休みながら全力を傾注できる閣僚の仕事がこの世にあるならば、「丸い四角形」だってあるだろう

 案の定、野党のみならず与党からも即刻辞任を求める声が噴出し、辞意表明だけで済まなくなった。病床で粉骨砕身するという中川氏の悲壮な、もしくは滑稽(こっけい)な決意を麻生首相がどうして認めたか、首相の了見が分からない

 もっと早く動けば中川氏には潔いイメージを、首相自身には果断のイメージを残して幕が引けたはずである。決断を渋った揚げ句、がけっぷちに追い詰められて腹をくくるという最も傷の深い脚本を選び、役を演じた

 「野党に喜ばれ、感謝される首相」という表現は以前ならば、「丸い四角形」並みの形容矛盾であったろう。今はどうだか知らない。

2月18日付 編集手帳 読売新聞
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