2.03.2009

退職金の出る「解雇」妙な暴露だけはしないでくれよ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 数ある大相撲の決まり手の一つに「合掌ひねり」がある。片方の手を相手の腋(わき)の下から差し、肩の上からまわしたもう片方の手と合掌するように組み合わせてひねり倒す

 大麻所持で逮捕された十両力士、若麒麟真一容疑者に日本相撲協会が下した処分も、協会が祈るように手を合わせた合掌ひねりと映らなくもない。退職金の出ない「除名」を見送り、退職金の出る「解雇」にとどめた

 善意に解釈すれば「まだ25歳、第二の人生を考えると除名はかわいそう」(武蔵川理事長)と温情を示し、更生を祈ったのだろう。別の、意地のわるい解釈もできる

 リンチ死事件の記憶が生々しく残り、八百長疑惑が裁判になり、相撲界の内実に世間の耳目が集まっている時である。退職金はもらえるようにしてやったのだから、妙な暴露だけはしないでくれよ、そう祈って手を合わせた処分と疑うこともできる。下世話な勘ぐりであればいい

 薬物汚染、“かわいがり”体質、横綱の品格…協会は角界不信の「三所(みところ)攻め」にさらされているさなかである。紛らわしい「合掌ひねり」よりも明快な「突き出し」が見たかった。

2月3日付 編集手帳 読売新聞
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