10.04.2010

国の行く末「戦略的互恵関係」隣人と、どう付き合っていくか・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 『源氏物語』で光源氏が言う。〈さかさまに行かぬ年月よ〉。時間は逆向きに流れてくれぬ、と。老いを語った言葉だが、過去に戻ることができないのは万物の宿命でもある

 潮位が10メートル上がり、のちに10メートル下がれば海面の高さは元の通りだが、水が引いた陸地の光景は一変していることだろう。さかさまに行かぬ年月よ、である

 省エネ家電などの部品に欠かせないレアアース(希土類)の対日輸出を停止していた中国が、規制の手綱を緩めたという。「尖閣」で悪化した日中関係の修復を模索している、との観測もある

 仮にそうだとしても、日本の大使を休日の真夜中に呼び出したり、報復さながらに日本人の身柄を拘束したり、品のない振る舞いに、多くの日本人の中国を見る目が一変したあとである。「戦略的互恵関係」を無邪気に語れた過去に戻ることはできまい。この図体(ずうたい)の大きな傲(おご)れる隣人と、どう付き合っていくか

 民主党の代表選挙、内閣改造、尖閣と、政治に揺れた9月もきょうで終わる。〈かんがふる一机(いっき)の光九月尽(くがつじん) 森澄雄〉。菅首相にも秋の夜長、国の行く末をじっくり考えてもらおう。

◆9月30日付 編集手帳 読売新聞
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