落語は冬の噺(はなし)に名作が多い――立川談春さんが著書「赤めだか」に書いている。〈寒さはビン乏を際立たせ、共感させ、少々無理なシチュエーション(場面設定)までをも納得させる力を持っているからだろう〉と
『芝浜』『夢金』『富久』…金銭を軸に物語の運ぶ冬の噺が幾つか思い浮かぶ。冬はヒン富というものに目が向く季節である
昼食代を50円節約するのに苦心している人から見れば、母親から12億円もらったのを「知らなかった」人は別世界の住人だろう。格差是正の先頭に立つべき人が、格差の象徴になってしまったところが情けない
談春さんの著書のタイトル「赤めだか」とは、師匠の談志さんが飼っている金魚のことだという。餌をやっても、いっこうに成長しない。弟子たちいわく、「これは金魚じゃない、赤いメダカだろう」。師匠を金魚に、その芸域に近づけぬ自分たちをメダカに喩(たと)えての表題らしい
名のある金魚の孫という触れ込みが、金銭音痴ぶり、外交音痴ぶりが暴露され、赤めだか説もちらほら聞こえてくる。同じ金魚鉢のピラニアに食べられてしまわないか、心配である。
12月25日付 編集手帳 読売新聞
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