8.05.2010

ズボラでいい、食事と健康にだけ目を配り、子育てを図太く・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 与謝野晶子の歌にある。〈腹立ちて炭撒(ま)きちらす三つの子を為(な)すに任せて鶯をきく〉。癇(かん)癪(しゃく)を起こして部屋を汚す3歳児を叱(しか)るでもない。後始末をするでもない。母は悠然とウグイスの声を聴いている

 晶子は11人の子をもうけた。生涯に5万首の歌を詠み、膨大な文章をつづり、苦しい家計をやりくりした人は、この図太(ずぶと)さで子育てを乗り切ったのだろう

 育児放棄の悲劇に接するたび、この歌が浮かぶ。部屋は汚れていい。ズボラでいい。食事と健康にだけ目を配り、あとは晶子流で図太く構える。できなかったか、と

 大阪市内のマンションで、3歳と1歳の幼児が遺体で見つかった。逮捕された母親(23)は「育児がいやになった」と供述している。食べ物も水も与えられなかったのだろう。児童相談所にはこれまで、近隣の住民からギャク待を疑う通報があり、職員が計5回にわたって訪問している。いずれも応答がなく、ドアは施錠されていたという。またしても瀬戸際の命を救えなかった

 長女は「桜子」ちゃん、長男は「楓」ちゃんという。その花と葉が季節を彩るころに生まれたか。美しい名前が哀(かな)しい。

 7月31日付 編集手帳 読売新聞
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