東京証券取引所では、昼休みをはさんで、午前の取引を前場(ゼンバ)、午後を後場(ゴバ)という。20年ほど前、当時の蔵相が「今日のマエバは…」と言い違えたことがある。主要な経済閣僚の蔵相が株式市場に疎いとして失望され、株が売られた
麻生元首相もやった誤読の定番が、なくなるかもしれない。東証が昼休みを廃止するかどうか年内に結論を出す。前場と後場の区別がなくなる可能性があるわけだ
取引が中断せず時間も延びれば、投資家には便利になる。証券業界に反対もあるが、取引のシステム化で技術的にさほど難しくないはずだ。売買注文をこなす速さも精度も、立会場で証券マンが身ぶり手ぶりしていた頃より格段に上がった
ただ気がかりなこともある。今年5月、ニューヨーク市場のダウ平均株価が突然、1000ドル近く下げ、「フラッシュ・クラッシュ」と命名された。原因は未解明だが、注文処理の高速化が、下落を加速させた
日本の証券界も、対岸の火事だと甘く見ない方がいい。システムの暴走による「閃光(せんこう)のような急落」は、閣僚の誤読が招いた株安と同様に、情けない。
8月2日付 編集手帳 読売新聞
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