4.02.2010

郵政改革法案をめぐるドタバタ劇、進むべき方角は浪高シ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 日露戦争の日本海海戦を勝利に導いた作戦参謀、秋山真之は戦闘のさなかも双眼鏡をのぞかなかった。「はっきり見える反面、視野が狭い。自分は肉眼で大局を知ればよろしい」と

 狙う目標、進む方角を指図し、視野をひろく保って大局を見失わない。軍事に限らず、統率する立場にいる人の心得だろう。心得のない統率者のもとで何が起きるかは、郵政改革法案をめぐるドタバタ劇が教えている

 政府の発表した法案に、閣内からは「異議あり」の大合唱が聞こえる。発表した郵政改革相は「首相の了解を得た」と言う。首相は「了解していない」と言う

 そもそも、官製「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命保険」の業務拡大が盛られ、官の無駄を徹底して排除したい民主党の意思とは逆向きの法案である。首相が肉眼で大局を見つめ、郵政改革相に「進むべき方角は、こうだ」と明確な指示を与えていれば、この醜態は生じていなかった

 「本日天気晴朗ナレドモ浪(なみ)高シ」は出撃時に秋山が起草した報告電報の一節として知られる。「ナレドモ」を「ナラズシテ」に変えれば、鳩山内閣に発せられた気象情報である。

 3月26日付 編集手帳 読売新聞
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