〈長い伝統に根ざした習慣をもつ頑丈な男たちからなる、この控えめで勤勉な小国…〉とある。作家のソルジェニーツィン氏が『収容所群島』に記したエストニア評である
頑丈で、控えめで、勤勉で――多くの人が感じている把瑠都評でもあろう。勝って戻る花道で付け人に笑顔を振りまく愛(あい)嬌(きょう)に、外国人力士というよりも親戚(しんせき)の子を見ているような親しみを覚えた人もいるに違いない。エストニア出身の把瑠都関(25)(尾上部屋)が大関に昇進した
何年か前に見せた奇手、「はりま投げ」が忘れがたい。相手の肩越しにまわしをつかんでひねり倒し、「これで相撲を覚えたら、どこまで強くなるか…」と、怪力にうなった覚えがある
先場所は白星14勝の半分以上を王道の「寄り切り」で上げ、花道での天真爛漫(らんまん)な笑顔にも険しい勝負師の風貌(ふうぼう)が加わった。心技両面で成長した証しだろう
エストニアの国章には青いライオンが描かれている。人気者の「蒼(あお)き狼(おおかみ)」が土俵を去ったいま、相撲ファンは「青き獅子」の奮迅に期待していよう。立ちはだかる横綱・白鵬関の肩越しに、ぐいと“綱”をつかむ日を待つ。
4月1日付 編集手帳 読売新聞
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