4.12.2010

「ザ・コーヴ」イルカをめぐる日本人の文化・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 源平・壇ノ浦の合戦で、イルカの大群が源氏から平氏の側に泳いで行くのを見た陰陽師の安倍晴信は、平氏の滅亡を予言したと平家物語は伝えている

 古い時代のイルカに関する記録は少ないが、群遊して魚を追うため、豊漁をもたらすものとして漁民の信仰の対象とされることもあったようだ。イルカを捕獲し料理する食文化も、一部地域で受け継がれてきた

 和歌山県太地町で行われているイルカ漁の模様を伝え、米アカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」が、日本でも一般公開される予定だ。イルカがいかに知的な動物であるかを強調し、その血で真っ赤に染まった太地の海を“告発”する

 他の動物とどう違うのだろうか。そんな疑問もおのずと浮かんでくる。もっとも、今や多くの日本人がイルカで思い起こすのは、食肉ではなく水族館などで見かけるその愛らしい表情だろう

 「時代は変わった」と語り、長年続けてきたイルカ漁をやめ、今では観光船によるイルカ・ウオッチングを企画する漁業者もいる。イルカをめぐる日本人の文化について改めて考えてみる機会かもしれない。

 4月5日付 編集手帳 読売新聞
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