「青椒肉絲(チンジャオロースー)」「回鍋肉(ホイコーロー)」などからの、おいしい連想だろう。日本人旅行者が香港で「蜆殻火水」の看板を見つけ、シジミ料理の店かと思って近づいたら、「シェル石油」のスタンドだったという
国語学者の見(けん)坊豪紀(ぼうひでとし)さんが『ことばのくずかご』(筑摩書房)に収めた一文にある。一見、おいしそうでもご用心――が笑い話でなくなったのは2年前、殺虫剤の混入された中国製冷凍ギョーザの中毒事件からだろう
中国の警察当局が製造元の臨時従業員だった男を逮捕した。ひと安心するより先に、不審の念が頭をもたげる
2年もたって証拠品の注射器を発見するとは、いかにも不自然だろう。本当はもっと早くに目星がついていなかったか。中国びいきの鳩山政権に配慮した一件落着、との観測もある。解決も、迷宮入りも、政治の思惑しだい――とすれば、中国食品が信頼を取り戻す日は遠かろう
普通にいためる「炒(チャオ)」、強火で一気にいためる「爆(バオ)」、揚げてから煮る「烹(ポン)」…と、調理に油の欠かせないお国柄とはいえ、犯罪捜査まで“政治油”でいためてはならない。結末の一皿が心なしか、胃にもたれる。
3月30日付 編集手帳 読売新聞
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