11.14.2009

贅沢病と呼ばれていた痛風も、今や国民病、疼く痛みに苦悶する・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 〈痛風の発作来たりて耐へてゐるベッドに聞こゆマラソン放送〉。数年前に読売歌壇で秀作となった一首である。選者の岡野弘彦さんは「泣き笑いのような作者の表情が伝わってくる」と評していた

 状況は推測するしかないが、風が吹いても疼(うず)く痛みに苦悶(くもん)する自分の姿が、同時刻、苦難に立ち向かうスポーツ選手に重なったと見える。知らない人は笑うでしょうが経験者はきっとうなずく

 かつては贅沢(ぜいたく)病と呼ばれて日本には少なかった痛風も、今や患者約50万人、予備軍は数倍いるらしい。40代以上の男性の10人に1人は患者か予備軍というから国民病と言っていいだろう

 その原因となる遺伝子を、防衛医大などの共同研究チームが突き止めたそうだ。原因遺伝子を両親から受け継いだ場合は、発症の可能性が最大26倍になるという。ただし無論、受け継いでいないから安心というわけではない

 昨夜は日本シリーズの勝負どころで己(おのれ)と闘う選手の試練を想(おも)い、痛風の疼きに耐えていた人が結構いたかも知れない。何よりもまず食べ物や酒量など生活習慣を改めるべし、とは重々分かっているでしょうけれど。

 11月8日付 編集手帳 読売新聞
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