11.28.2009

ビーンボールや、くせ球、暴投、なんでもありの北朝鮮・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 来月8日の訪朝が決まったスティーブン・ボズワース米政府特別代表は、駐韓大使も務めたベテラン外交官出身だ。1990年代には、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の初代事務局長として、北朝鮮と交渉を重ねた経験もある

 駐フィリピン大使だった80年代半ばには、マルコス大統領の退陣騒ぎの渦中にあった。時には、「ヤンキー・ゴーホーム」の反米プラカードを持つデモ隊に囲まれもした

 「よく見ると、その下に小さく『ウィズ・ミー』(私も一緒に連れてって)と書いてあってね」と、冗句まじりの回顧談を、ご本人から聞いたことがある。デモの参加者の本音は、反独裁、反マルコスであって、反米ではなかったと見抜いたわけだろう

 その冷静な観察力は、北朝鮮でどこまで発揮できるのか。危険なビーンボールや、くせ球、暴投、なんでもありの相手だけに、6か国協議への復帰や核放棄の必要性を説こうにも、なかなか容易にことは運ぶまい

 核兵器保有国の仲間入りを認めてもらおうと、北朝鮮から「ウィズ・ミー」と迫られたなら、はっきり「ノー」と突っぱねてもらいたい。

 11月23日付 編集手帳 読売新聞
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