他人の不幸は蜜の味。これによく似た意味の英語に「シャーデンフロイデ(Schadenfreude)」がある。元はドイツ語で、英語にはなかった言葉だ
世界に誇るトヨタ車が、対応が後手に回ったこともあって米国でリコールに追い込まれた。厳しいトヨタ批判を繰り広げる米国の一部の報道ぶりを知り合いの英国人と話していたら、この言葉を教えてくれた
米国の文化でもある自動車分野で、トップの座をニッポンに奪われ、米国人の深層心理が屈折していた時に、リコール問題が浮上した。日ごろ、心の奥底に沈殿していた気持ちが、一挙にはじけたのだろうか
日本は国内総生産(GDP)で過去40年余り、世界2位だったのが、今年は中国に追い抜かれそうだ。「1人当たりのGDPに直せば途上国」から、「中国の人口は日本の10倍。日本を追い抜くのは当然でしょう」と、中国人の反応は様々だ
日中逆転が両国の人々の深層心理にどんな変化を呼び起こすのか。「シャーデンフロイデ」に相当する中国語の成語は「幸災楽禍(シンツァイラーフオ)」である。日中ともに使う機会がないことを願いたいものだ。
2月22日付 編集手帳 読売新聞
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2.28.2010
2.27.2010
非難の度合いは100倍にもなれば、逆に100分の1にもなる・・・ 編集手帳 八葉蓮華
〈人は、起こしたことで非難されるのではなく、起こしたことにどう対応したかによって非難される〉。10年前に東京商工会議所が作った、企業向け危機管理マニュアルの書き出しにある
言葉の主は「青春とは人生のある期間ではなく心の持ち方を言う――」の詩で知られるサミュエル・ウルマンとの説もあるが定かでない。ともかく冒頭の至言は企業の間で少なからぬ共感を呼び、手帳に書き留めて胸に忍ばせる広報マンもいた
当然、人は「起こしたこと」についても相応の非難を受ける。しかしその後の対応如何(いかん)で非難の度合いは100倍にもなれば、逆に100分の1にもなる
つまるところ、危機に際しては情報公開を徹底し、認めるべき落ち度は迅速に認めるのが最善、ということだ。ただしこれが極めて難しい
米国でトヨタ自動車に対する風が、ますます強く、冷たくなっている。原因の一つが、後手後手の対応にあることは間違いない。豊田章男社長が今週、米議会の公聴会に臨む。正念場をどう乗り切るか。経団連の会長を2代輩出したトヨタが、「人は――」の至言を知らぬはずはなかろう。
2月21日付 編集手帳 読売新聞
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言葉の主は「青春とは人生のある期間ではなく心の持ち方を言う――」の詩で知られるサミュエル・ウルマンとの説もあるが定かでない。ともかく冒頭の至言は企業の間で少なからぬ共感を呼び、手帳に書き留めて胸に忍ばせる広報マンもいた
当然、人は「起こしたこと」についても相応の非難を受ける。しかしその後の対応如何(いかん)で非難の度合いは100倍にもなれば、逆に100分の1にもなる
つまるところ、危機に際しては情報公開を徹底し、認めるべき落ち度は迅速に認めるのが最善、ということだ。ただしこれが極めて難しい
米国でトヨタ自動車に対する風が、ますます強く、冷たくなっている。原因の一つが、後手後手の対応にあることは間違いない。豊田章男社長が今週、米議会の公聴会に臨む。正念場をどう乗り切るか。経団連の会長を2代輩出したトヨタが、「人は――」の至言を知らぬはずはなかろう。
2月21日付 編集手帳 読売新聞
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2.26.2010
男子悲願のメダル「道」お楽しみはこれから・・・ 編集手帳 八葉蓮華
綱渡り芸人の男が、やはり旅芸人のヒロインに語る。〈どんなものでも、何かの役に立つんだ。たとえば、この小石だって役に立っている。空の星だって、そうだ。君もそうなんだ〉
イタリア映画の名作、フェリーニ監督『道』の一場面である。映画の名せりふを集めた和田誠さんの『お楽しみはこれからだ』(文芸春秋刊)から引いた
右ひざのじん帯断裂、手術、リハビリ…険しい山坂も彼には、競技者の精神を磨く砥石として役に立ったのかも知れない。バンクーバー冬季五輪フィギュアスケートで『道』の音楽に乗せ、高橋大輔選手(23)が男子悲願の「銅」に輝いた
織田信成選手(22)の姿に、胸を打たれた人も多かったはずである。演技の途中で靴ひもが切れ、おそらくは泣き出したかったろうに、持ち味のコミカルな動きを最後まで演じきった。励ましの拍手の中で演技を終え、「ありがとうございます」、唇の形がそう動いたのを忘れない
何のいたずらか、4年前、銀盤の神様が靴ひもにぶつけた「小石」のおかげで今がある――何色かのメダルを胸に、そう語ってくれる日がくると信じている。
2月20日付 編集手帳 読売新聞
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イタリア映画の名作、フェリーニ監督『道』の一場面である。映画の名せりふを集めた和田誠さんの『お楽しみはこれからだ』(文芸春秋刊)から引いた
右ひざのじん帯断裂、手術、リハビリ…険しい山坂も彼には、競技者の精神を磨く砥石として役に立ったのかも知れない。バンクーバー冬季五輪フィギュアスケートで『道』の音楽に乗せ、高橋大輔選手(23)が男子悲願の「銅」に輝いた
織田信成選手(22)の姿に、胸を打たれた人も多かったはずである。演技の途中で靴ひもが切れ、おそらくは泣き出したかったろうに、持ち味のコミカルな動きを最後まで演じきった。励ましの拍手の中で演技を終え、「ありがとうございます」、唇の形がそう動いたのを忘れない
何のいたずらか、4年前、銀盤の神様が靴ひもにぶつけた「小石」のおかげで今がある――何色かのメダルを胸に、そう語ってくれる日がくると信じている。
2月20日付 編集手帳 読売新聞
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2.25.2010
人の世の浮き沈みと、泣き笑いと、人情喜劇を見ているような役者人生・・・ 編集手帳 八葉蓮華
東京・池袋のキャバレーで舞台衣装に着替えようとしたら、部屋がない。トイレの横にゴザが敷かれ、「ここで」と支配人が言う。売れる前の下積み時代ならばともかく、茶の間の人気者であった人には、こたえただろう
『てなもんや三度笠』が終わって『必サツ』シリーズが始まるまでの4年間、藤田まことさんはテレビから忘れられた時期をすごしている。ほかに仕事がなく、歌とコントを携えてキャバレーを回ったのはその頃である
「まことさん、まことさん」とチヤホヤしていた取り巻き連中は、背を向けて去っていった。いっときの人気にのぼせていた頭を冷やし、芝居の基礎を身につける時間を運の“神さん”が与えてくれたんでしょうな――藤田さんはのちに語っている
『てなもんや』あんかけの時次郎、『必サツ』中村主水、『はぐれ刑事純情派』安浦吉之助、『剣客商売』秋山小兵衛…と、重ねた年輪にふさわしい花を咲かせたのも、じっと地に根を張る不遇のときがあったからだろう。藤田さんが76歳で急逝した
人の世の浮き沈みと、泣き笑いと、人情喜劇を見ているような役者人生である。
2月19日付 編集手帳 読売新聞
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『てなもんや三度笠』が終わって『必サツ』シリーズが始まるまでの4年間、藤田まことさんはテレビから忘れられた時期をすごしている。ほかに仕事がなく、歌とコントを携えてキャバレーを回ったのはその頃である
「まことさん、まことさん」とチヤホヤしていた取り巻き連中は、背を向けて去っていった。いっときの人気にのぼせていた頭を冷やし、芝居の基礎を身につける時間を運の“神さん”が与えてくれたんでしょうな――藤田さんはのちに語っている
『てなもんや』あんかけの時次郎、『必サツ』中村主水、『はぐれ刑事純情派』安浦吉之助、『剣客商売』秋山小兵衛…と、重ねた年輪にふさわしい花を咲かせたのも、じっと地に根を張る不遇のときがあったからだろう。藤田さんが76歳で急逝した
人の世の浮き沈みと、泣き笑いと、人情喜劇を見ているような役者人生である。
2月19日付 編集手帳 読売新聞
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2.23.2010
「肥やさなかった」のと「肥やしそこねた」のとでは天と地の開き・・・ 編集手帳 八葉蓮華
免疫のことを英語で「イミュニティ」という。もとはローマ時代に租税や公役から免れることを意味したラテン語という。英和辞典にはいまでも、「免疫」と「免税」がともに載っている
人々の暮らしを支える税金を疫病と一緒にしてはいけないが、青息吐息で納税する人には実感かも知れない。確定申告の季節を迎え、国会で野党から脱税疑惑を追及される鳩山首相も、国民には納税を呼びかけている
百歩譲って、母上がくれた12億円のお小遣いを「知らなかった」(!)のが事実としても、腑(ふ)に落ちないことがある。これだけの騒ぎになった現在に至るも、面談であれ、電話であれ、母上に事の顛末(てんまつ)を一度も尋ねていないのはどういうわけだろう
「私腹を肥やしていない」と首相は言うが、露見していなければ、あとから納めた贈与税6億円は丸もうけだったはずである。「私腹を肥やさなかった」のと「私腹を肥やしそこねた」のとでは天と地の開きがあろう
首相の12億円や幹事長の4億円に馴(な)らされてか、百万円単位、一千万円単位の疑惑が何やら、かわいく思えてきそうで怖い。いやな免疫である。
◆2月18日付 編集手帳 読売新聞
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人々の暮らしを支える税金を疫病と一緒にしてはいけないが、青息吐息で納税する人には実感かも知れない。確定申告の季節を迎え、国会で野党から脱税疑惑を追及される鳩山首相も、国民には納税を呼びかけている
百歩譲って、母上がくれた12億円のお小遣いを「知らなかった」(!)のが事実としても、腑(ふ)に落ちないことがある。これだけの騒ぎになった現在に至るも、面談であれ、電話であれ、母上に事の顛末(てんまつ)を一度も尋ねていないのはどういうわけだろう
「私腹を肥やしていない」と首相は言うが、露見していなければ、あとから納めた贈与税6億円は丸もうけだったはずである。「私腹を肥やさなかった」のと「私腹を肥やしそこねた」のとでは天と地の開きがあろう
首相の12億円や幹事長の4億円に馴(な)らされてか、百万円単位、一千万円単位の疑惑が何やら、かわいく思えてきそうで怖い。いやな免疫である。
◆2月18日付 編集手帳 読売新聞
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2.22.2010
凋む…凌ぐ…凄い…「にすい」の変転・・・ 編集手帳 八葉蓮華
氷を光にかざすと、なかに筋が見える。漢字の部首「にすい」はこの筋をかたどったものという。テレビ桟敷で「にすい」の漢字を声に出した方もあったろう。〈凄(すご)い〉と
冬季五輪バンクーバー大会、スピードスケートの男子500メートルで、長島圭一郎選手(27)が銀メダルを、加藤条治選手(25)が銅メダルを、それぞれ手にした
長島選手は競技者の出世街道を歩いてきた人ではない。無名選手として過ごし、大学卒業のときは実業団チームから誘いはなかった。4年前のトリノ五輪では13位に終わり、屈辱の涙を流してもいる
心が凋(しぼ)む日もあったろう。凋む…凌(しの)ぐ…凄い…「にすい」の変転あればこそ、感激はひとしおに違いない。〈凛(りん)〉も同じ部首である。〈鈴あらば/鈴鳴らせ/りん凛と〉とは辻井喬さんの詩『新年の手紙』の一節だが、銀の鈴、銅の鈴のうれしい合奏に、しばし聴き入るとしよう
胸に描いたメダルとは色が違ったのだろう。競技を終えた二人の談話には悔しさもにじんでいた。ともにまだ20代、「金の鈴」への思いは他日に残すのもいい。夢に続編があるのも、若き競技者の特権である。
2月17日付 編集手帳 読売新聞
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冬季五輪バンクーバー大会、スピードスケートの男子500メートルで、長島圭一郎選手(27)が銀メダルを、加藤条治選手(25)が銅メダルを、それぞれ手にした
長島選手は競技者の出世街道を歩いてきた人ではない。無名選手として過ごし、大学卒業のときは実業団チームから誘いはなかった。4年前のトリノ五輪では13位に終わり、屈辱の涙を流してもいる
心が凋(しぼ)む日もあったろう。凋む…凌(しの)ぐ…凄い…「にすい」の変転あればこそ、感激はひとしおに違いない。〈凛(りん)〉も同じ部首である。〈鈴あらば/鈴鳴らせ/りん凛と〉とは辻井喬さんの詩『新年の手紙』の一節だが、銀の鈴、銅の鈴のうれしい合奏に、しばし聴き入るとしよう
胸に描いたメダルとは色が違ったのだろう。競技を終えた二人の談話には悔しさもにじんでいた。ともにまだ20代、「金の鈴」への思いは他日に残すのもいい。夢に続編があるのも、若き競技者の特権である。
2月17日付 編集手帳 読売新聞
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2.20.2010
「めちゃくちゃ」下手な医者の手にかかったら命がない・・・ 編集手帳 八葉蓮華
下手な医者が急病人の知らせに駆け出し、はずみで隣家の幼女を蹴飛(けと)ばしてしまった。「どうしてくれる」と母親が怒る。仲裁に入った大家がなだめていわく、「足で蹴られたぐらいは堪忍せよ。この人の手にかかったら命がない」
江戸の小(こ)咄(ばなし)にある。こういう話を語れるのも、聞いて笑えるのも、誰もがそこに誇張を読み取るからだろう。そんなヤブ医者は現実にいないと思えばこそ、心おきなく笑うことができる
政治資金をめぐる醜聞や、冬季五輪の話題に隠れた感はあるが、奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」の事件にはあきれるのみである
元理事長(52)らが執刀した肝臓の腫瘍(しゅよう)摘出手術で患者がシ亡した。心臓血管外科が専門で肝臓は専門外、手術の経験がない上、輸血用の血液も用意していなかった。そもそも腫瘍は良性だったという。元理事長はほかの勤務医にも“専門外手術”を奨励していたというが、報じられているところを総合すれば「めちゃくちゃ」の一語に尽きる
何がしたくて医師という職業を選んだのか――首をひねりつつ、憤りつつ、気に入りの小咄に封印をする。
2月16日付 編集手帳 読売新聞
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江戸の小(こ)咄(ばなし)にある。こういう話を語れるのも、聞いて笑えるのも、誰もがそこに誇張を読み取るからだろう。そんなヤブ医者は現実にいないと思えばこそ、心おきなく笑うことができる
政治資金をめぐる醜聞や、冬季五輪の話題に隠れた感はあるが、奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」の事件にはあきれるのみである
元理事長(52)らが執刀した肝臓の腫瘍(しゅよう)摘出手術で患者がシ亡した。心臓血管外科が専門で肝臓は専門外、手術の経験がない上、輸血用の血液も用意していなかった。そもそも腫瘍は良性だったという。元理事長はほかの勤務医にも“専門外手術”を奨励していたというが、報じられているところを総合すれば「めちゃくちゃ」の一語に尽きる
何がしたくて医師という職業を選んだのか――首をひねりつつ、憤りつつ、気に入りの小咄に封印をする。
2月16日付 編集手帳 読売新聞
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2.19.2010
ローカル「地域主権」頼らない、自立でふるさとを変える・・・ 編集手帳 八葉蓮華
合言葉は、「ローカル・アンド・ローカル(地方と地方)」だ。青森、山形、山梨、長野、福井、奈良、島根、高知、熊本の9県知事が政策グループ「自立と分散で日本を変えるふるさと知事ネットワーク」を結成した
教育、産業、観光などの分野で、お互いの先進的な政策事例を共有し、各県の施策に活用する。ある県が別の県の農協と連携して新商品を開発・販売したり、大学と共同研究に取り組んだりする
あえて「田舎の知事」ばかりが集まった。鳩山政権は「地域主権」を掲げるが、「国主導で国と地方のあり方を変えるのは難しい」と訴える。5月には地方の発想による独自の政策提言を発表する予定だ
無論、その道のりは簡単ではない。バブル崩壊後の「失われた10年」と小泉改革で、地方経済は疲弊した。若者や企業の大都市圏への流出が続く。9県の担当者が相談に集まる先も結局、東京となった。「日本の交通が東京中心に構築されているのを実感した」という
どの県にも特有の魅力がある。東京に頼らない「ローカル」の魅力を最大限に引き出し、育てるため、知恵を絞ってもらいたい。
2月15日付 編集手帳 読売新聞
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教育、産業、観光などの分野で、お互いの先進的な政策事例を共有し、各県の施策に活用する。ある県が別の県の農協と連携して新商品を開発・販売したり、大学と共同研究に取り組んだりする
あえて「田舎の知事」ばかりが集まった。鳩山政権は「地域主権」を掲げるが、「国主導で国と地方のあり方を変えるのは難しい」と訴える。5月には地方の発想による独自の政策提言を発表する予定だ
無論、その道のりは簡単ではない。バブル崩壊後の「失われた10年」と小泉改革で、地方経済は疲弊した。若者や企業の大都市圏への流出が続く。9県の担当者が相談に集まる先も結局、東京となった。「日本の交通が東京中心に構築されているのを実感した」という
どの県にも特有の魅力がある。東京に頼らない「ローカル」の魅力を最大限に引き出し、育てるため、知恵を絞ってもらいたい。
2月15日付 編集手帳 読売新聞
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2.18.2010
自らを鼓舞するも自然体で行くも、問われるのは常に結果・・・ 編集手帳 八葉蓮華
五輪に集うアスリートには2種類のタイプがあろう。一つは、必ずメダルを取る、などと公言して自分を鼓舞する選手。もう一つは、静かに闘志を燃やしつつ、自然体で実力を出そうとする選手
スポーツの世界に限るまい。例えば鳩山首相にあてはめると、やはり前者のタイプなのだろうか。夫人が金メダルをイメージして見立てたゴールド系の“勝負ネクタイ”を就任以来、締め続けているのだから
ただし最近は、毎日が金メダルタイとは限らないようである。たまに青系のネクタイも見るようになった。国会で明るい紫色を締めている時などはかなり新鮮に映る
金色もお似合いではあるが、野党の党首時代は赤あり緑ありで、多彩なネクタイの趣味を披露していたと思う。首相の仕事は日々勝負とはいえ、ゴールド系のみではマニフェストに固執する姿勢にも似る。鳩山さんが少し自然体になって、ファッションと政策に柔軟性を取り戻そうとしているのなら好ましい
無論、自らを鼓舞するも自然体で行くも、問われるのは常に結果だ。まずはバンクーバーから良いニュースが届くのを楽しみに待ちたい。
2月14日付 編集手帳 読売新聞
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スポーツの世界に限るまい。例えば鳩山首相にあてはめると、やはり前者のタイプなのだろうか。夫人が金メダルをイメージして見立てたゴールド系の“勝負ネクタイ”を就任以来、締め続けているのだから
ただし最近は、毎日が金メダルタイとは限らないようである。たまに青系のネクタイも見るようになった。国会で明るい紫色を締めている時などはかなり新鮮に映る
金色もお似合いではあるが、野党の党首時代は赤あり緑ありで、多彩なネクタイの趣味を披露していたと思う。首相の仕事は日々勝負とはいえ、ゴールド系のみではマニフェストに固執する姿勢にも似る。鳩山さんが少し自然体になって、ファッションと政策に柔軟性を取り戻そうとしているのなら好ましい
無論、自らを鼓舞するも自然体で行くも、問われるのは常に結果だ。まずはバンクーバーから良いニュースが届くのを楽しみに待ちたい。
2月14日付 編集手帳 読売新聞
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2.17.2010
スポーツ観戦の楽しみ「こだま」励ましたつもりが、励まされている・・・ 編集手帳 八葉蓮華
呼べば応える「こだま」は漢字で「谺」とも「木霊」とも書く。梅の木が冬に耐えて花を咲かせるこの季節には、「木霊」の表記が似合うようである
スポーツ観戦の楽しみは、木霊を聴くことにあるのかも知れない。故障を克服し、あるいはスランプを乗り越えて大舞台に臨んだ選手を「頑張れ、負けるな」と応援しているうち、自分が選手から同じ言葉で声援を送られていることに気づく。励ましたつもりが、励まされている
テレビが中継する“街頭の声”でよく耳にする「元気をもらった」「勇気をもらった」という言い回しも、木霊をその人なりに受け止めた言葉だろう。冬季五輪バンクーバー大会がきょう、開幕する
若木がいる。スピードスケートの15歳、高木美帆選手はリンゴのような頬(ほお)にニキビの跡も初々しい中学3年生である。ジャンプの6大会連続・葛西紀明選手37歳、スピードスケートの5大会連続・岡崎朋美選手38歳のように、年輪を重ねた幹もいる
木霊を反響させてくれるだろう日本選手団という樹林の、ほぼ全員に声援を送るつもりでいる。あえて「ほぼ」とした理由は言わない。
2月13日付 編集手帳 読売新聞
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スポーツ観戦の楽しみは、木霊を聴くことにあるのかも知れない。故障を克服し、あるいはスランプを乗り越えて大舞台に臨んだ選手を「頑張れ、負けるな」と応援しているうち、自分が選手から同じ言葉で声援を送られていることに気づく。励ましたつもりが、励まされている
テレビが中継する“街頭の声”でよく耳にする「元気をもらった」「勇気をもらった」という言い回しも、木霊をその人なりに受け止めた言葉だろう。冬季五輪バンクーバー大会がきょう、開幕する
若木がいる。スピードスケートの15歳、高木美帆選手はリンゴのような頬(ほお)にニキビの跡も初々しい中学3年生である。ジャンプの6大会連続・葛西紀明選手37歳、スピードスケートの5大会連続・岡崎朋美選手38歳のように、年輪を重ねた幹もいる
木霊を反響させてくれるだろう日本選手団という樹林の、ほぼ全員に声援を送るつもりでいる。あえて「ほぼ」とした理由は言わない。
2月13日付 編集手帳 読売新聞
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2.16.2010
「若い藝術家の肖像」作品に、作者に、骨の髄まで惚れ込めばこそ・・・ 編集手帳 八葉蓮華
谷崎文学や川端文学などを英訳したE・G・サイデンステッカー氏の自伝に、翻訳者の嘆きを語った詩が出てくる
〈広い世界のどこでも同じ/まったくもってひでぇ話/褒められるのはいつでも作者/貶(けな)されるのはいつでも訳者〉。それでも翻訳に精魂を傾けるのは、その作品に、作者に、骨の髄まで惚(ほ)れ込めばこそという
一つ小説を書くごとに、ジョイスの偉大さがわかる。もっと小説を書いてジョイスを知りたい――ジェイムズ・ジョイス『若い藝術家の肖像』の翻訳で今年の読売文学賞に選ばれた丸谷才一さん(84)が本紙で語っていた。愛の告白として、これ以上の言葉はあるまい
丸谷さんが古希を迎えたとき、親しい編集者が歌舞伎のせりふをパロディーに仕立てて贈ったという。丸谷文学の作品名が織り込んである。〈知らざあ言って聞かせやしょう エホバの顔を避けてより〉に始まり、〈たった一人の反乱と 人は言えども大きなお世話…〉とつづく
締めの名乗り。〈めでたく七十路迎えたる 丸谷のジョイス才一たあ おれがことだ〉。今度の受賞をあらかじめ祝ったような名せりふである。
2月12日付 編集手帳 読売新聞
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〈広い世界のどこでも同じ/まったくもってひでぇ話/褒められるのはいつでも作者/貶(けな)されるのはいつでも訳者〉。それでも翻訳に精魂を傾けるのは、その作品に、作者に、骨の髄まで惚(ほ)れ込めばこそという
一つ小説を書くごとに、ジョイスの偉大さがわかる。もっと小説を書いてジョイスを知りたい――ジェイムズ・ジョイス『若い藝術家の肖像』の翻訳で今年の読売文学賞に選ばれた丸谷才一さん(84)が本紙で語っていた。愛の告白として、これ以上の言葉はあるまい
丸谷さんが古希を迎えたとき、親しい編集者が歌舞伎のせりふをパロディーに仕立てて贈ったという。丸谷文学の作品名が織り込んである。〈知らざあ言って聞かせやしょう エホバの顔を避けてより〉に始まり、〈たった一人の反乱と 人は言えども大きなお世話…〉とつづく
締めの名乗り。〈めでたく七十路迎えたる 丸谷のジョイス才一たあ おれがことだ〉。今度の受賞をあらかじめ祝ったような名せりふである。
2月12日付 編集手帳 読売新聞
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2.15.2010
世界市場に打って出る戦略“理想のカップル”実るも、散るも縁・・・ 編集手帳 八葉蓮華
評論家の野口武彦さんは「恋愛」を次のように定義したという。〈より多く愛した側が敗北する男女の性的葛藤(かっとう)である〉。小谷野敦さんの「〈男の恋〉の文学史」(朝日選書)からの孫引きである
経営統合の交渉は、〈より多く愛した側が敗北する企業同士の経済的葛藤である〉と、定義できるかも知れない。業績で劣勢に立つ企業の側は、是が非でも統合を実現しなくてはならず、厳しい条件を受け入れてでも交渉をまとめようとするだろう
厄介なのはどちらも優良企業で、良縁は引く手あまた、相手を愛する度合いも一緒、交渉で敗北して無理難題をのむなんて「冗談じゃないわ」という強気同士の場合である。キリンとサントリーの統合交渉が決裂した
組織力を誇る三菱グループの一員で手堅い経営のキリンと、株式の約9割を創業者一族が握る独特の経営手法で知られるサントリーと、企業文化の壁を越えられなかったという。内需を食い合うのではなく、世界市場に打って出る戦略を共有した“理想のカップル”とも評された
実るも、散るも縁のものとはいえ、さみしさの残る恋の終わりである。
2月10日付 編集手帳 読売新聞
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
経営統合の交渉は、〈より多く愛した側が敗北する企業同士の経済的葛藤である〉と、定義できるかも知れない。業績で劣勢に立つ企業の側は、是が非でも統合を実現しなくてはならず、厳しい条件を受け入れてでも交渉をまとめようとするだろう
厄介なのはどちらも優良企業で、良縁は引く手あまた、相手を愛する度合いも一緒、交渉で敗北して無理難題をのむなんて「冗談じゃないわ」という強気同士の場合である。キリンとサントリーの統合交渉が決裂した
組織力を誇る三菱グループの一員で手堅い経営のキリンと、株式の約9割を創業者一族が握る独特の経営手法で知られるサントリーと、企業文化の壁を越えられなかったという。内需を食い合うのではなく、世界市場に打って出る戦略を共有した“理想のカップル”とも評された
実るも、散るも縁のものとはいえ、さみしさの残る恋の終わりである。
2月10日付 編集手帳 読売新聞
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2.12.2010
現実的なものとそうでないものに、そろそろきちんと分別した方がいい・・・ 編集手帳 八葉蓮華
マニフェスト、という外来語は二つある。政権公約を意味するのは「manifesto」。産業廃棄物などの申告書類は「manifest」。立派な公約集と政策廃棄物一覧は紙一重だ――昨夏の総選挙前にそう書いた
鳩山政権も半年近くたち、前者から後者へと移すべき政策がくっきりしてきたようだ。最たるものは子ども手当の「満額支給」だろう。実行すると年に5兆3000億円かかる
子育て家庭への思い切った経済支援はいいが、国の財布から見て、やはり巨額過ぎる。2人の財務副大臣がそろって、「満額は難しい」と本音で語ったのはなかなか分別ある姿勢だった
なのに上役からお叱(しか)りを受けた副大臣は一転、「うかつな発言だった」と陳謝したという。それでほかの福祉予算は確保できるの?と、医療や介護などの現場で不安が募るのは宜(むべ)なるかな
高速道路無料化や農家の戸別補償など半年前に掲げた公約の数々を、現実的なものとそうでないものに、そろそろきちんと分別した方がいい。「分別」もまた“ふんべつ”と“ぶんべつ”の2語あるが、鳩山政権にはどちらも必要だろう。
2月7日付 編集手帳 読売新聞
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
鳩山政権も半年近くたち、前者から後者へと移すべき政策がくっきりしてきたようだ。最たるものは子ども手当の「満額支給」だろう。実行すると年に5兆3000億円かかる
子育て家庭への思い切った経済支援はいいが、国の財布から見て、やはり巨額過ぎる。2人の財務副大臣がそろって、「満額は難しい」と本音で語ったのはなかなか分別ある姿勢だった
なのに上役からお叱(しか)りを受けた副大臣は一転、「うかつな発言だった」と陳謝したという。それでほかの福祉予算は確保できるの?と、医療や介護などの現場で不安が募るのは宜(むべ)なるかな
高速道路無料化や農家の戸別補償など半年前に掲げた公約の数々を、現実的なものとそうでないものに、そろそろきちんと分別した方がいい。「分別」もまた“ふんべつ”と“ぶんべつ”の2語あるが、鳩山政権にはどちらも必要だろう。
2月7日付 編集手帳 読売新聞
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2.10.2010
嫌疑不十分、黒に劣らず「白」たる身の証しもまた、棘の道・・・ 編集手帳 八葉蓮華
〈モノクロ映画では、黒と白のあいだに無限のグレーがある〉とは映像カメラマン、宮川一夫さんの言葉である。溝口健二監督『雨月物語』や黒沢明監督『羅生門』などの撮影で“国宝級”と評された名匠ならではの色彩論だろう
モノクロ映画と同じく「不起訴」にも、黒と白のあいだに濃淡無限のグレーがある。一私人であれば、検察当局が起訴を断念したその事実をもって身の潔白の証しとするのもいいだろう
政治資金の不正処理事件で不起訴(嫌疑不十分)になった政権党の最高実力者、小沢一郎民主党幹事長は公人中の公人である
土地購入の原資4億円をめぐる説明が「政治献金」「金融機関からの融資」「個人資金」と、二転三転したのはなぜか。総額で30億円に近い実態と異なる記載が、本当に秘書の一存で出来るのか…等々、解明されない謎が多すぎる。小沢氏は国会や記者会見の場で語るべきだろう
起訴された政治家には法廷という疑惑を晴らす場所がある。嫌疑不十分で不起訴になった政治家は、自身の言葉で「白」たる身を証し立てるしかない。黒に劣らずグレーもまた、棘(いばら)の道である。
2月5日付 編集手帳 読売新聞
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
モノクロ映画と同じく「不起訴」にも、黒と白のあいだに濃淡無限のグレーがある。一私人であれば、検察当局が起訴を断念したその事実をもって身の潔白の証しとするのもいいだろう
政治資金の不正処理事件で不起訴(嫌疑不十分)になった政権党の最高実力者、小沢一郎民主党幹事長は公人中の公人である
土地購入の原資4億円をめぐる説明が「政治献金」「金融機関からの融資」「個人資金」と、二転三転したのはなぜか。総額で30億円に近い実態と異なる記載が、本当に秘書の一存で出来るのか…等々、解明されない謎が多すぎる。小沢氏は国会や記者会見の場で語るべきだろう
起訴された政治家には法廷という疑惑を晴らす場所がある。嫌疑不十分で不起訴になった政治家は、自身の言葉で「白」たる身を証し立てるしかない。黒に劣らずグレーもまた、棘(いばら)の道である。
2月5日付 編集手帳 読売新聞
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2.09.2010
「一門の意思」良き伝統は崩れるに任せ、改めるべき旧弊を大事にする・・・ 編集手帳 八葉蓮華
昔の白粉(おしろい)には鉛が含まれており、希代の名優とうたわれた五代目中村歌右衛門は身を鉛毒に侵されつつ、芸に精進したという。偉大な先人がそうだったからといって、今、鉛入りの白粉を好んで使う役者はいない
人気の絶頂期、歌右衛門が入った風呂の湯は竹筒に入れて売られたと伝えられる。いかに人気が高かろうとも、今、あまり衛生的とは言いかねる同種のグッズを売りに出す役者はいない
「伝統を守る」とは古人の精神と、歳月に磨かれた様式美を受け継ぐことであり、無批判に旧習を温存することを意味しないのは当然だろう。相撲の社会はつくづく不可解である
日本相撲協会の理事選で一門の意思に反する候補に票を投じた安治川親方(元幕内・光法)に、退職する、しないの騒動が起きた。おのが自由意思を1票に託したことで職が危うくなる、そんな恐怖国家のような選挙がこの広い世の中のどこにある
横綱のガッツポーズには厳しい処分を下さず、「抑制の美学」という良き伝統は崩れるに任せ、改めるべき旧弊を大事にする。非常識という名の鉛毒に侵されているように思えてならない。
2月4日付 編集手帳 読売新聞
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人気の絶頂期、歌右衛門が入った風呂の湯は竹筒に入れて売られたと伝えられる。いかに人気が高かろうとも、今、あまり衛生的とは言いかねる同種のグッズを売りに出す役者はいない
「伝統を守る」とは古人の精神と、歳月に磨かれた様式美を受け継ぐことであり、無批判に旧習を温存することを意味しないのは当然だろう。相撲の社会はつくづく不可解である
日本相撲協会の理事選で一門の意思に反する候補に票を投じた安治川親方(元幕内・光法)に、退職する、しないの騒動が起きた。おのが自由意思を1票に託したことで職が危うくなる、そんな恐怖国家のような選挙がこの広い世の中のどこにある
横綱のガッツポーズには厳しい処分を下さず、「抑制の美学」という良き伝統は崩れるに任せ、改めるべき旧弊を大事にする。非常識という名の鉛毒に侵されているように思えてならない。
2月4日付 編集手帳 読売新聞
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