2.23.2010

「肥やさなかった」のと「肥やしそこねた」のとでは天と地の開き・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 免疫のことを英語で「イミュニティ」という。もとはローマ時代に租税や公役から免れることを意味したラテン語という。英和辞典にはいまでも、「免疫」と「免税」がともに載っている

 人々の暮らしを支える税金を疫病と一緒にしてはいけないが、青息吐息で納税する人には実感かも知れない。確定申告の季節を迎え、国会で野党から脱税疑惑を追及される鳩山首相も、国民には納税を呼びかけている

 百歩譲って、母上がくれた12億円のお小遣いを「知らなかった」(!)のが事実としても、腑(ふ)に落ちないことがある。これだけの騒ぎになった現在に至るも、面談であれ、電話であれ、母上に事の顛末(てんまつ)を一度も尋ねていないのはどういうわけだろう

 「私腹を肥やしていない」と首相は言うが、露見していなければ、あとから納めた贈与税6億円は丸もうけだったはずである。「私腹を肥やさなかった」のと「私腹を肥やしそこねた」のとでは天と地の開きがあろう

 首相の12億円や幹事長の4億円に馴(な)らされてか、百万円単位、一千万円単位の疑惑が何やら、かわいく思えてきそうで怖い。いやな免疫である。

◆2月18日付 編集手帳 読売新聞
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