2.03.2010

答弁中にヤジを飛ばし「うるさい」お行儀がよろしくない・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 蒙古(モンゴル)に精通し、「蒙古王」と呼ばれた政治家に佐々木安五郎がいる。衆院議員の佐々木が加藤高明外相に、蒙古について質問の演説をした。1915年(大正4年)のことである

 答弁に立った加藤が「佐々木君は蒙古には特別にお詳しいから…」と皮肉を述べた。間髪入れず、佐々木がひと声、「貴下の英国に於(お)けるが如(ごと)し」。英国通の加藤に切り返した当意即妙のヤジに、議場が沸いたという

 森銑三「風俗往来」(中公文庫)の一節だが、こういうピリッとワサビの利いた不規則発言ならばまだしも、である

 答弁中の閣僚が質問と関係のない発言をする。ヤジを飛ばした議員を「うるさい」と怒鳴(どな)りつける。政権の座に慣れていないせいか、鳩山内閣になって閣僚答弁のお行儀がよろしくない。不規則な発言を慎むよう、臨時の閣僚懇談会を開いて官房長官が異例の注意を与えたという

 テレビにも映る。家に帰って子供や孫を「お行儀が悪いぞ」とは叱(しか)りにくいだろう。その子から「貴下の国会答弁に於けるが如し」と言い返されたら、立つ瀬がない。ヤジに耐える能力も閣僚の資質である。

 1月29日付 編集手帳 読売新聞
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