2.06.2010

地球最後の時まで「終末時計」の針が3年ぶりに1分戻され・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 人類最初の原爆投下を命じたトルーマン米大統領が、それよりもはるかに強力な水爆の開発を原子力委員会に命じたと公式に発表したのは、60年前の1月31日だ。前年、旧ソ連の原爆実験成功で、米国の核兵器独占は終わっていた

 以来、世界は、核戦争による人類滅亡の危機にさらされてきた。昨年末の時点で、地球上に2万3000発以上の核兵器があり、うち96%を米国とロシアが保有している

 その両国が、新たな核軍縮条約の合意に向けて大詰めの交渉を再開する。それもあってのことだろう、先月、地球最後の時までの残り時間を示す「終末時計」の針が3年ぶりに1分戻され、「残り5分」から「残り6分」となった

 時計を管理する米科学誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」は、「核兵器のない世界」を唱えるオバマ大統領の存在も大きいとしている

 世界はちょっぴり安全になった、といわれても、昨年、2回目の核実験を強行した北朝鮮から、そう遠くない日本に住む身としては、得心しかねるが。「残り17分」だった19年前の世界に戻るまで、道程はまだ先が長い。

 2月1日付 編集手帳 読売新聞
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