2.08.2010

雪に白く覆われた「節分」固唾を呑んで、変わり目を見つめている・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 大正から昭和にかけてフランスの駐日大使を務めたポール・クローデルは詩人としても知られた。日本を題材に、171の短章を収めた詩集『百扇帖』から。〈雨やうやく雪となり/泥やうやく金(きん)となる〉(山内義雄訳)

 金色に輝いていく泥、が詩の眼目だろう。いわれてみればたしかに、ぬかるみの泥が降り積もる雪に隠れていくとき、そう映る一瞬があるようである。きのうの未明にかけて東京も、雨から変わった雪に白く覆われた

 水気の多い雪が春の遠くないことを教えている。きょうは節分、明けて4日は立春である

 今年ほど立春のその日が世間の耳目を集めている年もあるまい。いわゆる“小沢資金”をめぐり、政治資金規正法違反容疑で逮捕された石川知裕容疑者(民主党衆院議員)ら3人が4日に拘置期限を迎える。場合によっては小沢一郎・民主党幹事長の進退問題も浮上することから、永田町では与党野党を問わず、固唾(かたず)を呑(の)んで季節ならぬ捜査局面の変わり目を見つめている

 詩の〈泥やうやく金(きん)となる〉とは違い、巨額の金(かね)が醜聞の泥にまみれたなかで迎える、いささか無粋な春である。

 2月3日付 編集手帳 読売新聞
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