2.10.2010

嫌疑不十分、黒に劣らず「白」たる身の証しもまた、棘の道・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 〈モノクロ映画では、黒と白のあいだに無限のグレーがある〉とは映像カメラマン、宮川一夫さんの言葉である。溝口健二監督『雨月物語』や黒沢明監督『羅生門』などの撮影で“国宝級”と評された名匠ならではの色彩論だろう

 モノクロ映画と同じく「不起訴」にも、黒と白のあいだに濃淡無限のグレーがある。一私人であれば、検察当局が起訴を断念したその事実をもって身の潔白の証しとするのもいいだろう

 政治資金の不正処理事件で不起訴(嫌疑不十分)になった政権党の最高実力者、小沢一郎民主党幹事長は公人中の公人である

 土地購入の原資4億円をめぐる説明が「政治献金」「金融機関からの融資」「個人資金」と、二転三転したのはなぜか。総額で30億円に近い実態と異なる記載が、本当に秘書の一存で出来るのか…等々、解明されない謎が多すぎる。小沢氏は国会や記者会見の場で語るべきだろう

 起訴された政治家には法廷という疑惑を晴らす場所がある。嫌疑不十分で不起訴になった政治家は、自身の言葉で「白」たる身を証し立てるしかない。黒に劣らずグレーもまた、棘(いばら)の道である。

 2月5日付 編集手帳 読売新聞
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