6.22.2008

かかりつけ 編集手帳 八葉蓮華

振り込め詐欺をたくらむ連中には、まったく腹が立つ。「息子さんが会社の金を使い込んだ。すぐ弁済すればクビにならない」だの、「交通事故を起こした。示談金をすぐ払えば大事にならない」だの、よくも次々、新たな手口を思いつくものだ。その悪知恵を、まともなことには使えぬものか◆今年は4月までで112億円も被害が出ており、過去最悪ペースという。社会保険庁や税務署など官公庁を名乗る手口も目立つ。被害者の大半は高齢者◆振り込め詐欺を店頭で何度も防いでいる女性職員が、東京の多摩信用金庫にいる。大金を振り込もうとしているお年寄りに丁重に事情を聞き、あわやという所で食い止めた。今年すでに3回◆「大切な預金を守れてよかった」とお手柄職員は小紙都民版に語っている。普段から振り込め詐欺の手口を研究し、おかしいと感じた人には積極的に声をかけることが功を奏した◆きのう「振り込め詐欺被害者救済法」が施行。簡易な手続きで被害金を取り戻せる制度ができた。とはいえ、まず被害を出さないことが第一だ。身近に“かかりつけ金融機関”があると心強い。

6月22日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge