6.30.2008

「壁面緑化…」 編集手帳 八葉蓮華

ペギー葉山さんが歌った「学生時代」は<蔦(つた)のからまるチャペルで/祈りを捧(ささ)げた日>で始まる。米国東部の名門大学がアイビー・リーグと呼ばれるのは、蔦(アイビー)が伸びた伝統の校舎に由来する◆景観がよく、夏は涼を呼ぶ緑陰になり、冬には寒さを和らげる。蔦は学舎(まなびや)に似合うが、その効果に着目したのが建設業界だ。地球温暖化対策の一環で、ビル外壁に蔦を生育させる「壁面緑化」が増えている◆ただ難点は、蔦の生育が遅く、思うように伸びないこと。培養土が必要で、頻繁に水を撒(ま)く手間もかかる。維持管理が簡単な代替品として、竹中工務店などが進めているのが苔(こけ)の研究だ。苔と言えば寺社というイメージを変えるかもしれない◆約2400種ある苔の中から、日当たりが良い場所に向いているスナゴケと、日射量が少なくても生育するハイゴケが選ばれた。ビル外壁を想定して、パネルに張り付けた苔を垂直面に定着させ、育てる実験が続く◆北海道洞爺湖サミットの会場近くで、積水ハウスが屋根に苔を配したモデルハウスの展示を予定している。苔自慢のビルが登場する日も近いだろう。

6月 30日付 編集手帳 読売新聞

八葉蓮華、Hachiyorenge