9.14.2009

身銭と公金の境目をわきまえて「廉吏」私欲のない正直な役人、遠くなりにけり・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 ある高等学校が入試の出題で「廉吏」の意味を問うたところ、「安月給の官吏」という解答が複数あった。最近のことではなく、詩人土井晩翠が1934年(昭和9年)に出版した随筆集「雨の降る日は天気が悪い」の一節である

 漢語が日常の身近にあった当時でもそうならば、「清廉」「廉直」よりも「廉売」「廉価」になじみの深い昨今の誤答率は、おそらく昔の比ではなかろう

 私欲のない正直な役人、正答の「廉吏」は遠くなりにけり。税金で卓球台やゲーム機などを買い、裏金をため込み、千葉県で発覚した不正経理は30億円にのぼるという

 “預け”と称する手口は納入業者に物品を架空発注し、代金を業者の口座にプールする。業者に見返りも与えずに不正の片棒をかつがせるとは、普通は考えにくい。汚職の苗床を見せられたような不潔感がつきまとう

 漢和辞典によれば「廉」には「境目」の意味がある。善悪の境目をわきまえて「清廉」、暴利との境目をわきまえて「廉価」になるらしい。身銭と公金の境目をわきまえて「廉吏」…と、いまさら社会人のイロハを説かねばならぬ馬鹿(ばか)らしさよ。

 9月11日付 編集手帳 読売新聞
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