新聞社では、出先から電話で原稿を送ることがある。原稿中に「イトウ」とあれば、受け手は漢字を確かめねばならない。新聞記者出身の青木雨彦さんが「冗談の作法」(ダイヤモンド社刊)で体験談を披露している
「イはイタリア(伊太利亜)のイだね?」「サンズイのイです」「サンズイ?」「イドのイです」「井戸のイにサンズイがある?」「あります、オイドのイだもの」「オイド?」「そうです、オイドニホンバシの…」
この会話に笑みをこぼす人ばかりとは限るまい。郷里を離れて都会暮らしをした人のなかには、訛(なま)りでつらい思いをした記憶をほろ苦く過去から紡いだ方もあろう
この5連休、勤め先や学校のある都会から帰省し、きのうは「敬老の日」をおじいちゃんやおばあちゃんと過ごした人もいたはずである。お国訛りの会話は、心の凝りをほぐす薬効つきのシャワーであったに違いない
読売俳壇で目に留め、書き抜いた句がある。〈食(け)と言はれ食(く)とこたへ食ふづんだ餅(もち) 福島県 黒沢正行〉。食(け)(食べなさい)と食(く)(食べます)、1文字で心身の温まる魔法のようなシャワーもある。
9月22日付 編集手帳 読売新聞
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