「夏休み中遊び呆(ほう)けていた生徒たちが、新学期を前にあわてて宿題をしている」。フランスのテレビで識者がそんなコメントをしていた。怠け者は欧州各国政府、宿題は積もり積もった財政赤字の削減である
スペインが公務員給与の5%削減、イタリアは3年間据え置きを発表した。フランスは退職年齢の引き上げを検討している。ギリシャの財政危機が引き起こしたユーロ圏の大混乱が目覚まし時計になったのだろう
ユーロに加入していない英国でも、新政権が取り組んだ最初の仕事は歳出削減だった。財布のひもが堅くなると、景気に悪影響が及ぶだけではない。人の心まで頑(かたく)なになるように見える
フランスやベルギーでは今、イスラム教徒の女性が顔を覆う衣装を着て公の場に出るのを禁じる法律が出来つつある。オランダでは「反イスラム」を掲げる右翼ポピュリズム政党が支持を広げている。世界的金融危機の影響が深刻だったハンガリーでは、少数民族排斥を唱える極右政党が第3党になった
人も組織も国家も、懐が寂しくなれば寛容な心まで失いがちになる。分かってはいても、やりきれない。
5月31日付 編集手帳 読売新聞
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