6.19.2010

満身創痍の一人旅「はやぶさ」黙々と航海を続け人気は急上昇・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 今ごろ「はやぶさ」はどのあたりを飛行中か。つい天空のさらに奥を見上げてしまう。大気圏突入で探査機本体は燃え尽きる。母が捨て身で子を守ったかのように、直径40センチのカプセルだけが今夜、オーストラリアの砂漠に落下する

 地球を離れ7年。エンジンや姿勢制御装置の故障、燃料漏れに通信途絶、はやぶさは満身創痍(そうい)の一人旅だった。「くしゃみ一つで危篤に」「動いている方が奇跡的」。過去記事で読む研究者の発言も悲観的なものが多い

 一度の失敗にめげず、小惑星イトカワに再着陸を試みた。採取した砂を持ち帰ってくれるかもしれない。故障で絶体絶命のピンチとなった時は太陽電池パネルを使って宇宙ヨットに変身し、生き延びた。帰還が3年延期になっても黙々と航海を続けた

 その健気(けなげ)さに、はやぶさ人気は急上昇、ネット上にファンサイトも登場した。「冷たいビール」は、先日ソユーズ宇宙船で帰還した野口聡一さん。はやぶさに言葉があれば、「後継機をぜひ」などと言うのではないか

 サッカーW杯の「初戦勝利!」は明日夜のお楽しみ。今夜は、南半球からのもう一つの朗報を待つ。

 6月13日付 編集手帳 読売新聞
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