6.25.2010

庭に水、新し畳に、伊予すだれ、透綾(すきや)縮みに、色白のたぼ・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 涼しいものを並べた江戸期の俗謡がある。〈庭に水、新し畳に、伊予すだれ、透綾(すきや)縮みに、色白のたぼ〉

 「伊予すだれ」は伊予(いまの愛媛県)のゴキダケ(御器竹)で編んだすだれのことで、きわめて薄い絹の縮み織り「透綾縮み」とともに、暑気を払う頼みの品であったらしい。最後の「たぼ」とはもともと、日本髪の後ろに張り出した部分を言い、転じて若い女性を指す

 身辺に目をやれば、水を打つ庭はなく、伊予すだれや透綾縮みには縁がなく、色白のたぼは影さえ見えない。ジトジト、ベタベタ、うっとうしい濁点が身を離れない梅雨のさなかである

 きょうに限って言えば、列島から梅雨どきの濁点を吹き飛ばしてくれるかも知れない“涼”の種が夜に控えている。サッカー・ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で日本代表が強豪オランダと対戦する。勝てば、決勝トーナメント進出の切符に指先がかかる。日本時間で午後8時半のキックオフを、朝から待ちかねている人もいるだろう

 今宵(こよい)限定の俗謡として、〈風呂上がり、手には盃(さかずき)、冷や奴(やっこ)、青、青、青、青、勝ち点は3〉と詠んでみる。

 6月19日付 編集手帳 読売新聞
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