まだお目にかかったことはないが、広い世間には月日の姓がある。四月一日(わたぬき)さん、八月一日(ほずみ)さん、八月十五日(なかあき)さん…
六月一日は、「うりはり」さんと読むらしい。阿部達二氏の随筆集『歳時記くずし』(文芸春秋)によれば、〈瓜(うり)の実が張ってくるからというが、むしろ瓜割りで成熟して実が割れてくる、あるいは割ると食べごろという説のほうが納得がいく〉。初夏の風が匂(にお)うような姓である
5月末、5月末、5月末…政権を浮揚させる呪文(じゅもん)のように繰り返し語ってきた鳩山首相に、迎えた「うりはり」は誤算だらけだろう
本紙の世論調査では、「普天間」の迷走で内閣支持率は19%に下落し、首相の退陣を求める人は59%にのぼる。社民党の連立離脱で瓜は割れ、割れて食べごろの政権に野党はよだれを催している。民主党内からも首相の続投に異論が聞こえはじめた
珍しい姓には「十二月晦日」(ひづめ)さんというのもある。師走の晦日(みそか)で日が押し詰まった意味だとか。残り少ない時を刻む、秒読みのせわしなさが漂う。誰かさんになぞらえているわけではない。
6月1日付 編集手帳 読売新聞
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