〈フネさんはいくつでワカメ産んだのか〉。女性が詠んだ現代川柳の秀作集『女の一生』(仲畑貴志編、毎日新聞社)で見つけた一句である
テレビアニメ『サザエさん』に登場する磯野家の母フネさんは物腰が落ち着いている。小学3年生であるらしい末娘ワカメちゃんとの年齢差に興味をひかれての作だろう。長い歳月を共にするうち、架空の世界に住む人々にも実在の人物に抱くのと変わらぬ関心がわくものらしい
連載開始から28年余、本紙の4コマ漫画『コボちゃん』(植田まさし作)の田畑家も虚実の境に住み始めたようである。第2子の名前を募ったところ、4万通を超す応募があったという
それが使命ではあるのだが、新聞には、なかでも連載漫画の載る社会面には、喜怒哀楽の「怒」と「哀」を盛る器のようなところがある。ここ数日の東京本社版を見ても、横浜市内の女子高校で授業中に生徒が同級生を刃物で刺した事件があり、口蹄疫(こうていえき)の感染拡大があり、現役大関が手を染めた野球賭博がある
コボちゃんの妹は「実穂(ミホ)」と命名されたという。“喜楽欠乏症”を癒やす、かわいい妙薬だろう。
6月17日付 編集手帳 読売新聞
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