「大利根月夜」「傷だらけの人生」などで知られる作詞家、藤田まさとさんは借家から借家へ、生涯に18回引っ越した。転居通知で自分の存在をレコード会社に思い出させているのか――不遇のころはそう思ったと、夫人の回想にある
世間の耳目は鳩山政権の一挙一動に集まり、野党席に引っ越した自民党の影は薄い。今回の総裁選には、「自民党もお忘れなく」という転居通知の意味もあっただろう。元財務相の谷垣禎一氏(64)が新総裁に選ばれた
心の弾まぬ転居にも効用はある。必要な品とガラクタを分別する作業を通して、党の姿は簡素に、清潔になるに違いない
外交や安全保障での地に足のついた政策は、持っていく荷物の筆頭に置かれていい。捨てていくガラクタの第一は、政権党の大邸宅にぬくぬく暮らすなかで身についた“おごり”だろう
〈人の情けにつかまりながら/折れた情けの枝で死ぬ…〉と、藤田流の名調子「浪花節だよ人生は」にある。自民党を古くから支えてきた人々の「情けの枝」がなぜ、ポキリと折れたか。引っ越し荷物の入念な分別作業なくして、政権奪還などあり得ない。
9月29日付 編集手帳 読売新聞
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