プロ野球で「18」はエース格の投手が背負う番号として定着している。いま大リーグの松坂大輔投手が西武時代からそうだったし、巨人では藤田元司、堀内恒夫、桑田真澄と錚々(そうそう)たる顔ぶれが並ぶ
同じ数字を背負う手ごわい敵が列島を脅かしている。数千人が犠牲になった伊勢湾台風に匹敵する強さの台風18号には、少しの油断もならない。左投手が投げるカーブの軌道にも似た進路予想図を気にかけつつ、眠りの浅い朝を迎えた方も多かろう
「日本文化の真髄とされるワビ、サビの根源は地震と台風だ」と、作家の山田風太郎さんが晩年の随筆に書いている。“もののあわれ”など独特の無常観はそこから生まれたと
その通りとしても、地震と違って台風にはいま、観測技術と情報網のおかげで心の準備をするだけの時間がある。痛ましいニュースで無常観を味わいたくはない。必要とあれば避難は早めに、通勤や通学の行き帰りにも周囲への目配りをお忘れなく
打ち返すことも、打席を外すこともできない。ヘルメットをしっかりかぶり、球から目を離さず、ベースから遠く立って身を守るのみである。
10月8日付 編集手帳 読売新聞
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