10.09.2009

ユーモアあふれる科学研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」昭和史のお年玉がくれたお年玉・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 パンダを評した言葉のなかで〈昭和史のお年玉〉は秀逸の部類だろう。戦争の山坂を越え、国交回復の象徴として中国から贈られた上野動物園の2頭が日本で初お目見えした経緯を、巧みに言い表している

 糸井重里さんの「萬流コピー塾USA」(文芸春秋)にある。お題を出して読者から広告コピーを募る週刊誌の人気企画を一冊にしたもので最近の本ではないが、米国から届いた愉快な朗報にその一句を思い浮かべた

 ユーモアあふれる科学研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」生物学賞に田口文章・北里大学名誉教授が選ばれたという。パンダのフンに含まれる細菌で台所のゴミを90%減らせることを示した業績が評価されての受賞である

 田口さんは上野動物園からフンをもらい受けて研究したというから、うれしい受賞は昭和史のお年玉がくれたお年玉だろう

 〈国家畜(こっかちく)〉という作品もあった。中国政府のパンダ外交を皮肉ったコピーだが、文明はゴミで滅びるとも言われる現代である。将来いつか、国々のゴミを減らす救世主「国家畜」となって文明存続の「お年玉」をくれる日が、さて、来るかしら。

 10月3日 編集手帳 読売新聞
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