10.15.2009

「ええじゃないか」の乱舞とともに、踊りの流行が人心の不安を表す・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 演劇評論家の戸板康二さんに、東京で一人暮らしを始めた当時の回想談がある。下宿の階下がレコード店で、来る日も来る日も朝から晩まで「東京音頭」が聞こえる。たまりかねて引っ越したと、随筆集「ハンカチの鼠」に書いている

 ヤートナ、ソレ、ヨイヨイヨイと、国じゅうがその歌と踊りに酔いしれたのは1933年(昭和8年)、国際連盟脱退や、小林多喜二が特高警察の手で虐殺されたのと同じ年の夏である

 幕末「ええじゃないか」の乱舞とともに、踊りの流行が人心の不安を表す証しとして語られることが多い

 「CM総合研究所」の調査によれば、今年上半期の新商品2403銘柄のCMで好感度トップ10のうち6作品までが異例なことに、踊りを含む“ダンス系CM”であったという。視聴者が景気や雇用に感じている不安を反映しているのかも知れない

 江戸の地口に、〈驕(おご)る平家は久しからず〉をもじり、〈踊る平気は久しからず〉とある。軽快なステップを踏む鳩山内閣の歳出見直しというダンスは始まったばかりだが、景気の目配りをおろそかにして「踊る平気」にならない用心が要る。

 10月7日 編集手帳 読売新聞
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