7.11.2010

バクチはよしなよ。名前の通り、大相撲が朽ち果てる・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 どこからか、年代物の太鼓を仕入れてきた道具屋に、口うるさい女房が悪態をつく。「おお汚い、そんな太鼓が売れるものかい。まったく、お前さんときた日にゃ…」。落語『火焔(かえん)太鼓』である

 黙って受け流し、太鼓に積もったほこりを払おうとする亭主に、女房から二の矢が飛ぶ。「およしよ、ほこりがなくなりゃ、太鼓もなくなっちまうよ…」

 落語の女房ならば、言っただろう。「ウミを出し切りゃ、日本相撲協会がなくなっちまうよ…」。リンチあり、大麻あり、暴力団に特別席をあてがう親方あり、野球賭博の大関あり――角界の一部にウミがあるのではなく、角界とはそもそもウミで出来ているのではないか、そう思ったのは一度や二度ではない

 きのう、開催が一時は危ぶまれた名古屋場所の番付が発表された。解雇された大関琴光喜のほか、謹慎によって休場する力士は幕内・十両で10人を数える。面白い土俵の望みようがない

 落語『三枚起(さんまいき)請(しょう)』で、棟梁(とうりょう)が若い衆に言う。「バクチはよしなよ。名前の通り、場で朽ちるっていうぜ」。“次”は個々の親方、力士で済まない。大相撲が朽ち果てる。

 7月6日付 編集手帳 読売新聞
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