7.29.2010

猛暑にはいつも厄介「ドッグデイズ」乗り切っていくしかあるまい・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 「土用」を英語で「ドッグデイズ」と言い表すことは、以前に和英辞典を引いて知っていた。どうして、“犬の日々”なのだろう

 きのう、所用があって東京モノレールの線路沿いに羽田空港の近辺を炎天下、ひと駅ぶんほど歩いた。整備工場らしき建物が並ぶのみで、身を寄せる日陰はなし、のどを潤す店も自動販売機もなし、いつしか舌を出して息をしているわが身を顧みて、英単語の成り立ちを想像した

 きょうは芥川龍之介の忌日にあたる。「あんまり暑いので、腹を立ててシんだのだろう」と述べたのは作家の内田百だが、芥川がみずから命を絶った83年前の気温は35~36度とか。午前中に各地で37度を超す今年は、それをもしのごう

 屋内にいても熱中症には油断ができず、海や川には事故の危険がつきまとい、猛暑にはいつも厄介な道連れがいる。飲む水、浴びる水と上手に付き合って、乗り切っていくしかあるまい

 われとわが身に気合を入れる号令がわりに、中村草田男の一句を。〈炎熱や勝利の如き地の明るさ〉。からだに障りさえしなければ、犬の物まねを競う夏らしい夏もいいものである。

 7月24日付 編集手帳 読売新聞
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