第38代横綱・照国は〈桜色の音楽〉と評された。仕切りを重ねるにつれて紅潮していく肌のことである
テレビ放送が始まる直前に引退しているので、会場で観戦した人たちが口伝えに広めた異名だろう。高画質のカラー受像機が普及した今は、桜色に染まっていく肌の変化をテレビ桟敷にいて眺めることができる
仕切りの時間も、土俵入りの化粧まわしも、場内のざわめきも、すべてを引っくるめて大相撲の楽しみとしてきたファンには残念だろう。野球賭博で揺れる名古屋場所をNHKが中継放送しないことを決めた
警視庁は相撲部屋などを捜索し、野球賭博と暴力団の関係解明を急いでいる。「理事長代行」職に外部から人材を受け入れる人事に日本相撲協会が最後まで抵抗したように、事ここに至っても親方衆が本気で角界を浄化する意思があるのか疑わしい。公共放送として中継の中止はやむを得ない判断であったろう
当代にも横綱・白鵬関や大関・把瑠都関のように、染まりゆく肌の美しい人がいる。〈桜色の音楽〉とはお別れになる。「しばしの…」か「永(なが)の…」かは、協会の心がけ次第である。
7月8日付 編集手帳 読売新聞
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