今週からふるさとで過ごす人も多かろう。親戚(しんせき)や旧友と話し込むうち、忘れていたお国ことばを思い出すのも帰省の楽しみだ
ところが最近の調査では、名古屋や仙台、福岡など地方都市を中心に、若者が「訛(なま)りが恥ずかしい」という理由で方言を使わなくなっているという。危機感を抱いた名古屋市の河村たかし市長は、担当室を設け、市内の小中学校で「ことば教育」を始める
衆院議員の当時から名古屋のことばを愛し、その復権を政権公約に掲げた。「地方のことばはただの標準語の方言ではない」という持論の裏には官製標準語への対抗心もあるのだろう
もうひとつの公約である「市民税の10%減税」にも、国が定める「標準」が立ちはだかる。国が定めた標準税率より税率を下げた自治体は、国の許可がないと新たに借金ができなくなる。そうなれば、市は自由に予算も組めない
河村市長は就任後初の所信表明で、「名古屋をどえらけにゃあ(よりすごく)面白い街にしたい」とぶちあげた。公約が放言に終わるようなら、市長の名古屋ことばも色あせる。標準語の“河村節”に戻らないことを願う。
8月10日付 編集手帳 読売新聞
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