〈合併に村の名消えて他郷めく故郷に父母の墓を洗へり〉。先日編まれた平成万葉集の中に、印象深い一首があった。詠んだのは東京都の原澤●司さん76歳
もとより津々浦々の地名を知っていたわけではないが、このところ、ニュースの中に聞き覚えのない自治体の名が出てくることが多い。平成の大合併とやらで、味気ない地名や珍奇な地名も増えた
引き換えに、10年前は3200以上あった市町村の数は半減した。景色やにおいは変わらねど慣れ親しんだ村の名は消えて、故郷のような故郷でないような、しっくり来ない思いで墓参りをした人も多いのではないか
今ではお盆にお墓を清め、お参りすること自体が貴重なものになりつつある。〈迎へ火も送り火もなくマンションの盂蘭盆(うらぼん)静かに暮れてゆきたり〉。これは愛知県の佐々木よし子さん57歳の歌。寂しいと感じるか、時代の流れと感じるか、それぞれあろう
きのうときょう、ふるさとから都会へと帰るUターンのラッシュはピーク。この風物詩が続いていることに少し安堵(あんど)する。高速道路の渋滞など、大変でしょうが、みなさんお気をつけて。(●は「日」の下に「舛」)
8月16日付 編集手帳 読売新聞
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