人には2種類ある。「旅する人間」と「到着する人間」だ――とは推理作家ジェフリー・ディーバーが主人公の犯罪学者に語らせた言葉である(文春文庫、「エンプティー・チェア」)
過程を楽しむ人間と、結果を急ぐ人間、そう言い換えることもできよう。悲しいかな現代人は「旅する人間」にあこがれつつも、あくせく「到着する人間」でいる時間が長いようである
先日の地震で壊れた東名高速は上り線がまだ復旧していない。せめてお盆休みぐらいは「旅する」派に転じたいものだが、車で出かけて無事に帰ってこられるかしら…と、「到着する」派から抜け出せない方もあろう
コピーライター、吉竹純さんに一首がある。〈東京を繃帯(ほうたい)のように巻いている高速道路よ一週間のさようなら〉。この夏に限れば包帯姿は、東京ではなく被災地の高速道路かも知れない
静岡県内の崩落現場を上空写真で見る。東名高速の直線は包帯のようであり、えぐり取られた路面の黒ずみは滲(にじ)んだ血のように見える。11日の地震発生から15日の復旧(見込み)まで“全治4日”の軽傷も、利用客にはやはり痛い傷である。
8月14日付 編集手帳 読売新聞
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