3.05.2010

福祉とはなかなか含蓄のある言葉、与えるも幸い、受け取るも幸い・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 「福」と「祉」、文字の意味はいずれも「さいわい」である。字典によれば、偏の「示」は、神様への捧(ささ)げ物を置く台を表す

 「福」の旁(つくり)は豊かな酒樽(さかだる)の象形だ。福とは祭りの時に捧げる酒肉であり、後に皆で分け合う。一方の「祉」はそこに神がとどまる、つまり幸せを授かることを意味するらしい。与えるも幸い、受け取るも幸いということだろうか。福祉とはなかなか含蓄のある言葉だ

 週末に「読売福祉文化賞」の贈賞式に立ち会った。受賞者は横浜市で路上生活者を支援している「NPO法人・さなぎ達」、習慣の違いや偏見に悩む在日外国人の生活相談にあたる「京都YWCA・APT」、福岡市を拠点に年50回ものコンサートを開く知的障害者のプロ楽団を旗揚げした「JOY倶楽部プラザ」の3団体

 活動の詳細は23日朝刊に紹介されている。福祉に携わる人たちの並大抵でない苦労には頭が下がるばかりだが、同時に、幸いを分かち合っているという充実感も見えてうらやましい

 心の酒樽を熟成させている人たちを、ささやかな賞で応援できる機会を得たというのもまた、幸せなことである。

 2月28日付 編集手帳 読売新聞
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