3.24.2010

自身を偉人になぞらえ“自己見立て”丈夫な神経がうらやましい・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 日本の政治談議には「見立て」が多い――そう語ったのは作家の丸谷才一さんである。決断の速い政治家がいれば織田信長に見立て、派閥のボスに反旗を翻した政治家がいれば明智光秀に見立て…といった傾向を指す

 丸谷説によれば、日本の政治家は言葉で自分を印象づけない。〈見立ては、言葉の才能の乏しい政治家たちを無理やりスターに仕立てるための、大衆の知恵なのかもしれない〉と(文春文庫『半日の客 一夜の友』)

 偉人に見立てたい政治家がいるうちはいい。いなくなり、大衆が見立てをやめたらどうなるか? 政治家は自身を偉人になぞらえ、“自己見立て”をするしかない

 兄の鳩山由紀夫首相は昨年10月の所信表明演説で、政権交代は「無血の平成維新」であり、「国民への大政奉還」であると語っている。自民党を離党した弟の鳩山邦夫・元総務相は、党内の執行部批判勢力を融合するべく、みずからを「薩長連合」の坂本龍馬に重ねているらしい

 “見立て”に税はかからないから、べつに文句をつける筋合いはないが、与党、野党を問わず、政治家諸氏の丈夫な神経がうらやましい。

 3月17日付 編集手帳 読売新聞
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