3.09.2010

緊張感が足りない「遅刻」時間を極力有効に使おうと、利口な人が多い・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 汽車好きで知られた内田百●は随筆『阿房列車』シリーズのなかに書いている。発車時刻まで余裕をもって駅に行く人と、ぎりぎりを狙って遅刻する人を比べると、〈乗り遅れる側に、利口な人が多い〉と(●は門構えに月)

 いつも小一時間は駅で待つ「利口でない」典型の我が身には心の弾まぬ洞察ではあるが、利口な人が時間を極力有効に使おうとするのはお説の通りだろう

 きのうの参院予算委員会に閣僚3人が遅刻し、開会が15分遅れて議場が一時騒然となった。3氏は陳謝したものの、鳩山首相は記者団に「緊張感が足りない」と苦い顔で語った。利口なところは遅刻ではなく、答弁で発揮してくれればいい

 政治家の進退にも、時機を逸する“遅刻”はあろう。東京市長などを務めた後藤新平は、〈早し良し、ちょうど良し危なし〉の格言を残している。教員労組の裏金疑惑などカネ絡みの醜聞を抱える民主党だが、「ちょうど良し」の頃合いを見計らっているうちに傷口が化膿(かのう)しないか、ひとごとながら気に掛かる

 後藤は陸奥水沢(岩手県)の出身で、小沢一郎・民主党幹事長には同郷の大先輩にあたる。他意はない。

 3月4日付 編集手帳 読売新聞
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