3.15.2010

「密約」悲惨と不快のどちらを選ぶか、という苦渋の選択・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 「究極の選択」という言葉が流行したのは20年ほど前だろう。雑誌か何かで読んだ川柳を記憶している。〈究極の選択 便所か終電か〉。どちらをあきらめるか、脂汗を浮かべて思案している

 政治家も脂汗の選択を迫られるときがある。経済学者のガルブレイス氏は〈政治とは、悲惨と不快のどちらを選ぶか、という苦渋の選択だ〉と述べている

 核持ち込みを巡り、日米間に「密約」や「暗黙の合意」があったとする報告書を外務省の有識者委員会がまとめた。国民に隠し事をする“不快”と、核の抑止力を拒絶した場合に生じかねない安全保障上の“悲惨”と――密約は苦渋の選択であったに違いない

 一触即発の東西冷戦下、という密約を結んだ当時の事情には理解を寄せるにしても、外交機密とは可能な限りすみやかに主権者たる国民に明かされるべきものであり、今回の検証結果が政権交代の木に実った一つの果実であるのは認めざるを得ない。鳩山政権はさて、これからどういう対米政策をとるのだろう

 北朝鮮の核の脅威や、中国の軍事大国化が懸念されるなかで、よもや“悲惨”の道は選ぶまいが。

 3月10日付 編集手帳 読売新聞
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