歌舞伎の六代目尾上菊五郎が〈菊五郎一座〉を主宰していた頃という。あることで怒り、「〈菊五郎一座〉なんて解散だ」と宣言した。周囲が頭を抱えると六代目いわく、「きょうから〈菊五郎劇団〉だ」
激情に駆られるときもどこかユーモラスな名優の素顔を伝えている。「新党」をめぐって揺れる自民党の報道に接するたび、六代目の挿話が頭をかすめる
新党の結成を目指す鳩山邦夫・元総務相が自民党に離党届を提出した。与謝野馨・元財務相や舛添要一・前厚生労働相も新党を視野に、党執行部批判を強めている
鳩山政権が人気のない理由の一つは、「政治とカネ」の醜聞にまみれた首相や小沢一郎・民主党幹事長に“古い自民党のニオイ”がするからである。国会で両氏の醜聞をいくら厳しく追及したところで、自分で自分の体臭を攻撃する自民党の支持率が好転しないのは当然だろう。新党、新党と言う前に、自民党の何を捨て、何を引き継ぐのか――その議論が聞こえてこない
〈自民党一座〉から生まれるのが中身の変わらない新党〈自民党劇団〉ならば、民主党には痛くもかゆくもなかろう。
3月16日付 編集手帳 読売新聞
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