3.28.2010

医療費も膨らませている“健康”を強要するような論理で増税・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 〈あなたが酒も飲まず、たばこも吸わず、車も運転しないなら、納税義務を回避している〉。外国にそんな箴言(しんげん)があった。無論、取りやすい所から取る、という税制の一面に向けた皮肉であろう

 これからは下戸でもコーラやサイダーなどが大好きなら、堂々たる納税者として胸を張れる時代が来るかもしれない。米ニューヨーク州が「砂糖入り清涼飲料税」の導入を目指している。今月末に州議会で採決するそうだ

 課税する理由は、甘い清涼飲料が肥満の人を増やし、州政府の医療費も膨らませているから、という。まぁ何となく、もっともらしい理屈ではある

 ただ、たばこならば受動喫煙の被害もあり、課税強化が支持されるのは分かるものの、酒そして清涼飲料へとまるで“健康”を強要するような論理で増税の動きが広がるのは薄気味悪い。例えば、立体映像テレビは目に刺激が強いから「3D税」を、などと言われたらたまらない

 税金に関する外国の箴言をもう一つ。〈この世で最良のものは無料であることだが、政府は絶対に課税する方法を見つけようとする〉。日本では御免(ごめん)蒙(こうむ)りたいものだ。

 3月21日付 編集手帳 読売新聞
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