〈四十八茶百鼠〉とは、茶色や鼠(ねずみ)色(灰色)の種類が多彩であることを言い表している。日本人の繊細な美意識から生まれた言葉だろう。灰色には白に近い「銀鼠(ぎんねず)」があれば、黒に近い「蝋色(ろいろ)」もある
その人が身にまとう疑惑はさて、これから白と黒、どちらの極に動いていくのだろう。政治資金の不正処理事件で東京地検が不起訴処分(嫌疑不十分)にした小沢一郎・民主党幹事長について、検察審査会はきのう、「起訴相当」とする議決をした
小沢氏にしてみれば「銀鼠にあらず、蝋色なるべし」と指さされたも同然だが、何より不可解なのは事ここに至るまで、ご当人が疑惑を“脱色”する懇切な説明を拒んできたことである
土地購入に充てた4億円の出どころをめぐる小沢氏の説明は二転三転している。最初は「政治資金」と言い、やがて「銀行融資」に変わり、最後は「個人資金」に落ち着いた。その都度、何を根拠に発言してきたか、それを明かすだけでも身の灰色を淡くできるだろうに、しない
色調のやや暗い「消炭(けしずみ)色」も、灰色の仲間である。政治不信の消炭に火がついてから慌てても遅い。
4月28日付 編集手帳 読売新聞
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