5.07.2010

郵政改革、民間と競争するなら本来は民営化するのが筋・・・ 編集手帳 八葉蓮華

 〈少々づゝの金子を預かって下さるとの事ですが利足(りそく)が一年三分とは何とあんまり安くは御座(ござ)いませんか〉〈十銭二十銭の小額から預かり、利足まで下さるとは誠に有(あ)り難(がた)いと存じます〉

 小紙創刊から半年、135年前に早くも読者の間で紙上論争があった。1875年(明治8年)のきょう5月2日に取り扱いが始まった、郵便貯金をめぐる投書である

 察するに、前者はかなり裕福な人で、後者は当時の平均的な庶民だろう。その頃、家の貯えは箪笥(たんす)や壺(つぼ)の中にあるのが普通だった。年利3%は他の貸し借りと比べて確かに低かったようだが、まだ民間銀行が少ない時代に広く貯蓄習慣を植え付けた

 鳩山政権の目玉の一つ郵政改革法案が閣議決定され、郵貯の預け入れ上限額が2000万円まで拡大される見通しだ。老後の不安が尽きない現代、庶民もそれくらいの貯金が必要ということなのだろうか

 明治には少なかった民間金融機関と競争するなら本来は民営化するのが筋だが、その実行期限は白紙らしい。この“改革”に、平成の庶民からも〈誠に有り難い〉と投書が来るかどうかは、まだ分からない。

 5月2日付 編集手帳 読売新聞
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge